月別アーカイブ: 2017年11月

映像表現とアイデンティティの真価

観てきました。(当日、予報になかったのに雨が降ってきてちょっとうれしかった)

ちょっとすごいものを観てしまったな…という感覚が凄まじくて、エンドロールでようやく身体が熱くなっていることに気づいた。(ちょっと額が汗ばんでた)

謎がちりばめられているため超絶的にネタバレがしたくなくなるんですが、そこを我慢しつつ、例のごとく感想をつらつらと書いていきます。

あらすじは下記に。

追われるのはブレードランナー?世界を滅ぼす鍵を握るのは―。 舞台は2049年のカリフォルニア。ライアン・ゴズリング扮する“ブレードランナ ー”(※人間社会に紛れ込んでいる、労働用の人造人間“レプリカント”を処分する役目の捜査官)Kは、ある重大な秘密に辿り着き、その真相を知るためハリソン・フォード演じるかつてのブレードランナー、デッカードの行方を追っている。 冒頭でデイヴ・バウティスタ演じる男に、デッカードの行方を問いただすK。 レプリカントを製造するウォレス(ジャレッド・レトー)は、「“彼”が鍵を握っている」と言うが、彼とは誰を指すのだろうか? そして、デッカードの居場所をつきとめたKは、過去に何があったのかを彼に問う。前作『ブレードランナー』でレプリカントの恋人レイチェ ルと逃亡したデッカードがその後どうなったのか・・・

・まず、音響がすごい。あああハンズ・ジマー感、と思ったら予想通りハンズ・ジマーだった。加えて、監督がドゥニ・ヴィルヌーヴだからミステリアス感が前作にも増して増強されている気がする。(この音響の感じが好きな人は「ボーダーライン」を観てみてくださいね。ベニチオ・デル・トロ好きの方もぜひに)

・劇中に出てくるロサンゼルスの街並み、その看板類にはやはり日本語が使われているのは踏襲なのかー。オリジナル版の際はリドリー・スコットが近未来感を出すべくエキゾチック感を彷彿させたいがため、日本語がなによりも最適だったんだろうけど。付随して、コカ・コーラとか、PEUGEOTとか、作品中にプロダクトプレースメントさせるの、どのくらいの金額かかってるんだろ。協賛費用でカンパなのかな?

・本作のテーマは「命の意義とは」「アイデンティティ」にあるという前提に立った時、主人公Kの命があまりにも犠牲的すぎて、とても感じ入るものがありました。真理にすぐに辿り着いた彼も素晴らしいし、その後のクールな行動に思わず胸を打たれてしまう。

・にしても、ライアン・ゴズリングすごいな…。稼ぎ頭すぎる。話題作しか出てないやんもはや。本作の場合、脚本を読んだハリソン・フォードが「ライアン・ゴズリングが適役だ!!」と言って、監督サイドもそれに即同意したとのこと。確かにぴったしすぎた。正統派イケメンフェイスの上品さ、艶めかしさ、そしてミステリアスが共存する俳優、なかなかいない…。(ラ・ラ・ランドもよかったけれどね)

・また、はまり役という観点でいうと、やっぱりウォレスを演じたジャレット・レト。(実はミュージシャンなんですよね子の人)ダラス・バイヤーズ・クラブの演技もだいぶよかったけれど、個人的には本作がすごかったなー。なんなんだあの端正な顔立ちは。そして、あの白みがかかった黒目がこれまたかっこよいこと…(盲目という役どころなのでセンシティブですが)。

・予告編を見すぎたせいか、「デッカード!出るのか、デッカード!出たぁぁあ」といったテンションで、デッカードの出演シーンを今か今かと待ち望んでしまう自分がいたので、あまり見すぎないことをお勧めします(とはいえ動画貼ったけど)

・ジョイ(Joi)ほしい。もはや恋人というポジションを越えて、主人公のアドバイザー的役割まで発展している二人の関係性がとても興味深かった。Skinnerや、Skin-Job(人もどき)などと散々にけなされるシーンから、孤独かつ、なかなかにしんどい生活をしているKのよき理解者だったんだろうな。女優さん、かわいすぎる。(アナ・デ・アルマスという方らしい)(チェックせねば)

https://www.google.co.jp/search?q=%E3%82%A2%E3%83%8A%E3%83%BB%E3%83%87%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%82%B9&rlz=1C1CHBD_jaJP755JP755&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=0ahUKEwjD5qnHwKfXAhULf7wKHc-BBHAQ_AUICigB&biw=1163&bih=536

・いろいろな作品を思い出す作品でもあったな。(とはいえこのオリジナル版がいろんな映像表現の元祖なのだけど)ジョイがサービスとして一般化している様子からは「her」を、ジョイと主人公のラブシーンからは「愚行録(あくまでも映像的な意味合い)」を…といった感じで。

・ジョイが主に外出の際に時たまビニール製(?)のコートを着るのいいすね。前作ファンはうれしいはず。

・ラヴ強すぎ。こわい。

予告編を観ていた際は「リドリー・スコット、ドゥニ・ヴィルヌーヴ、ライアン・ゴズリング、ハリソン・フォード」って、このメンツでこけたら戦犯じゃないか…と思ってたんですが、まんまとやられました。

あの密室にいた研究者が泣いた意味を推し量ると、胸が熱くなります。Kに対する想いを想像すると。

相対する、全てを知ったKの清々しく精悍な表情。

ああ、いいシーンだったな。

「オリエント急行殺人事件」の予告編がかなりイケてる…。

海外版のハナシですけど。

予告編は下記に。

こんなスタイリッシュでイケてるハナシでしたっけ?(すんません、アガサ・クリスティ先生)(楽しく読んだ覚えはあります)

しかしながら、日本版の30秒バージョンはかなりまとまりよかった。

ジョニー・デップ、ケネス・ブレナー、ペネロペ・クルスと、そのキャスト自体の豪華さはいうまでもないんですが、それ以上にこの大文字アルファベットの青文字表記×リズミカルな音楽がとてつもなくかっこいいなと。

そんなリズミカルなイケてる音楽は下記。

(しかしながら、ジョニー・デップが早々に死ぬ役ってところがまた豪華。笑)(そして、監督もケネス・ブラナーなのね。やるなぁ)

ちょっくらTRONを連想しました。(まぁこちらはこちらで音楽はDaft Punkだからな…)

ちなみにDaft Punkのサントラの中では、やっぱり”Derezzed”がかっちょいい。(過去形がついてるので”消去した”くらいの意味合いになるのかな?)

ちょっと脱線しましたが、「オリエント急行殺人事件」は昨日(2017年11月3日)からロシアとイギリスで先行上映とのこと。あまりマークしていなかったけれど、この予告編に惹かれて観に行く説あるな…。

日本公開は2017年12月8日とのこと。(公式サイトは下記に)

http://www.foxmovies-jp.com/orient-movie/

最近の作品だと「アトミック・ブロンド」の予告編はなかなかにかっこよかった印象。

さすがは「Killer Queen」ですね(意味合いも合わせてくる製作陣のセンスにあっぱれ)。

そして、猿の惑星へ

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8C%BF%E3%81%AE%E6%83%91%E6%98%9F:_%E8%81%96%E6%88%A6%E8%A8%98

昨日、観てきました。「猿の惑星 聖戦記(グレート・ウォー)」。

歴代の中では、マット・リーヴス監督の手掛けた本シリーズが一番はまったかもしれないです。

とはいえ、昔のは昔のでいいんですけどね。ハリボテの猿が人間を囲み、人間が発狂するというそのヒステリックな映像の狂気さに興奮する系として成立していたなと。

本シリーズでは映像もほんっとうにリアル。どちらかというと脚本自体が面白くて(特に一作目「創世記(ジェネシス)」)、また主人公のシーザーのイケメンっぷりに脱帽する楽しさがありました。

シリーズ完結ということで、これを機にちょっと振り返って感想を書いておこうかなと。

猿の惑星:創世記(ジェネシス)Rise of the Planet of the Apes


あらすじはウィキペディア先生をご参照くださいまし。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8C%BF%E3%81%AE%E6%83%91%E6%98%9F:_%E5%89%B5%E4%B8%96%E8%A8%98

知能を持ったエイプ達の戦い方が秀逸で、非常にお手本的なところにその知能の高さを感じさせます。

また、子供を守りたいから、おじいさんが暴力振るわれそうだからなど、知能を持ったエイプが取る行動の発端がとても愛情に満ちていて、一貫して”彼らは全く非がない”という撮り方が、人間をこれでもかと皮肉っていて個人的には最高。ほんと最高。(監督のこだわりを感じました)

シーザーが育った家を想って、あの窓のマークを書くシーンもよいし、幼少期のシーザーを映す際、窓を象徴的に撮っていて好きです。(オリに入れられてからのシーザーの態度変容は、観ていて心苦しいものがありますが….。)

エンドロールの意味の吹き込み方もしゃれてる。なかなかに完成度が高い作品だなぁと久々に観ても思います。(2011年の作品なんですね!大学入学した年か…そんな古いとは)

ちなみに、ジェネシス(創世記)とは、天地創造から始まる、ユダヤ教・キリスト教の最初の聖典を指すんですよね。こういう副題の引っ張り方は結構タイプ。

主演のジェームズ・フランコとシーザーの間に芽生える愛情(友情?)が、次回作までしっかりと引き継がれているところもポイントですね。

ヒロインどっかで見たことあるな、と思ったら「スラムドックミリオネア」だった。

https://www.google.co.jp/search?q=%E3%83%95%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BB%E3%83%94%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%BC&rlz=1C1CHBD_jaJP755JP755&stick=H4sIAAAAAAAAAONgFuLSz9U3SCqpTDOtUgKzTXIycpLytISyk6300zJzcsGEVXJicckjRl9ugZc_7glLuUxac_Iaox0XFkVCGlxsrnklmSWVQnJcfFJIxmswSPFwIfF5AGORa-V-AAAA&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=0ahUKEwjIhbas0ZzXAhVGH5QKHYplBz4Q_AUICigB&biw=1163&bih=536

猿の惑星:新世紀(ライジング)Dawn of the Planet of the Apes

あらすじは下記に。

舞台は「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」の10年後。アンディ・サーキス演じる猿のヒーロー、シーザーの先導により、遺伝子進化した猿は増加し人類の存亡を脅かしていた。地球の制圧権をかけた猿と人類の本格的戦いが、想像を絶するスケールと迫力で描かれる!

本作では、シーザーの関わる共同体が家族という最小単位から、部族というわりかし大きな単位まで広がっているんですね。なので、偏見とコミュニティの話としてもすごく楽しめると思います。

人間と違うところは、シーザー率いるエイプたちは、種族全体を家族という共同体として考えている点、率いる難易度が上がりまくりで大変だろうな、と。(家族という単位はあるものの、実質シーザーが全てを見ているわけで)

ましてや、知能を持ったエイプとはいえ、”サル”であることは変わりないので、子供が増えていくスピードも本能的に早いはず。とすると、なおさら統率が難しい。(知能が上がったことでどうにかなってるんだろうか、ここの詳細は余白なので想像あるのみ)

展開としては割と既視感溢れる、仲間割れ→一旦ピンチに陥る→リベンジしてハッピーエンド…とはならないんですね。そして、ここでハッピーエンドにならないのがこの作品の面白さだったりします。最新作ではないので言ってしまうと「The war already has begun.」なわけです。

人間側主人公(名前忘れた)とシーザーの間に友情が芽生える中、お互いがお互いを慮り「君の方こそ逃げろ」と言い合うシーンはちょっとジーンと来ましたね。お互いに共存を望みつつもどうにもならない状況を憂いあっている関係性。とてもきれいでした。(シーザーのおでこって絶妙に平べったくて、こつんってしやすそうだな。)

また、前作の引用の仕方がステキ。そして、ここでは悪者でしかなかったコバも次回作につながる重要なポイントになります。(全体的に、前作の引継ぎ方がとても上手なシリーズなんですね)

猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)War for the Planet of the Apes

地球の支配者が変わりゆく激動の歴史のうねりがついにクライマックスを迎える。カリスマ的な主人公のシーザーが、リーダーとしての使命感と家族を奪われた復讐心の狭間で葛藤するドラマを核にした映像世界には、観る者の胸を締めつけるエモーションが息づく。果たして未来を切り開く“希望の地”へたどり着くのは猿か、それとも人類か。誰もが知っている結末の、誰も知らなかった壮絶なドラマが遂に明かされる。

もう少し全面戦争感を期待していた点、ちょっと拍子抜けしちゃいましたね。

ひたすら憎しみにかられ、抜け出せない闇の中を彷徨うシーザーにフォーカスがあたりすぎて、グレートウォーとはただただ名ばかりじゃないかなと。

とはいえ、憎しみに駆られるということは、シーザーがより人間的な良心の持ち方、思考をするようになったことの証明。彼の成長軸からしたら興味深かったりもしました。

ただ、おまっ、それ殺されるでしょ!そのシーン!!おいっ!と思わず叫びたくなるシーザーが、これでもかと殺されずにいる点も少しばかり冗長に感じました。なんなら観客はシーンを無駄に想像すぎて余計にハラハラしたはず(狙いなのであればどハマりしたし、心臓バクバクだった)

(そういった野蛮な殺し方をしない=”聖”戦記といったところなんですかね?)(いや、まぁシーザーという伝説のエイプがいて、エイプの未来を守り抜くために懸命に戦ったという事実を記したこの作品自体が聖戦記ってことですよね、すみません)

しかしながら、今回人間が陥る症状のロジックは好きです。知能が発達するエイプとは対照的に、知能が退化していく人類という逆さまの構図。なるほどなぁと。(どんな症状なのかはネタバレにつき割愛)

あとは、オープニングが洒落てましたね。Rise、Dawn、それぞれの文字の当てはめ方。赤文字と黄文字の有効活用。センスあるなーと思いました。そして、ノヴァちゃんがひたすらかわいくて、バットエイプが無駄におしゃれだった。(あのキャラを新登場させた判断がすごい)

大佐役の方、これまたどこかで見たなーと思っていたら「グランド・イリュージョン」でした。

総括として、個人的には一作目が一番好きでした。間延びもせずよくあそこまでプロットを作り込んだものだなと。新薬研究が発端となる作品は多いですが(例えば、バイオハザード)、そこまで現実離れもしすぎていなかったのが、逆にリアリティがあって怖かったですね。

結局のところ、猿の惑星となるんですが(大ネタバレ)(しかしそういう作品なので…)、彼らの惑星となったとしても、教育が生まれ、科学技術が生まれ、猿の数(人口ではなく猿口?)が増えていき、部族が分かれ、国となり…という流れを歩むのだとしたら、その起点起点で彼らの身体的特徴にも変化が生まれ、結局は二足歩行のホモサピエンスに近づいていくのでは(?)と思うんですが、どうなんですかね(詳しい人に聞いてみたい)

余談ですが、二作目でゲイリー・オールドマンが使っているiPadが、今観てもなかなかに古くて、ちょっくらノスタルジックなんですよね。

ただ、あの避難自治区で唯一残っていたのが最新のものではなく、バージョン古めな旧iPadだった、ないしはあのバージョンが好きであえて使っていた(これは分かりにくすぎて無いと思うけど)という意味合いにもとれるので、発売してから5年くらいのスパンにあるIT機器は、こういった作品には有用だなと。(戦争物なども)