月別アーカイブ: 2016年7月

ありがとう、目黒シネマさん。

観てきました。目黒シネマさんの「ちはやふる」上の句・下の句同時上映。

とにかく瑞々しすぎる。千早の通う”瑞沢高校”の瑞は、瑞々しいの瑞なんだろうか。

純粋に青春ど真ん中を疾走する主人公。ためらいつつ、彼女の輝きに魅了されてしまう少年たちの葛藤。その描き方がお見事。思わず共感する人が多いはず。

千早が新からもらった情熱が、太一をはじめ瑞沢チームのみんなに伝播し、最後には新に戻り、観客の心をつかんでいく。

とにかく中高時代へのノスタルジーがすごすぎて、こんな情熱を持って部活に向き合っていれば…と、少し人生を後悔する映画ランキング3位以内。超個人的野村周平くんのイケメン度が光る映画ランキング1位にランクインしました。

個人的に太一君には共感せずにはいられなかった。(やはりかっこいいぞ、野村周平くん)そしてこんなに三角関係をきれいに描いている作品は久しぶり。

また、キャストたちの演技もさることながら、國村隼の声にしびれる。

特に競技シーンの映像には見入ってしまう。競技かるたの激しい体の動き、手さばきを撮影するため、1秒で約1000コマの撮影が可能なハイスピードカメラ「ファントム」を用いたとのこと。

光の当て方も絶妙で、あの光り具合を出すためには照明をガンガンをたく必要があったはず。パンフレットによると”18kwの照明を至近距離で2台”用いたらしい。(もはやアクション映画。笑)

また、クイーンを演じた松岡茉優が本当に札一枚の端っこを綺麗にとれるようになった。というエピソードは、”カルター”になるためのキャスト陣の猛特訓ぶりに感服してしまう。

しかし「下の句」には突っ込みどころも多い。

特に許せないのが、北央からもらった超貴重なノートをカバンにいれたまま、太一の帰りを土砂降りの中で待つシーン。思わず「おい!」とまた思った(鑑賞2回目)。

ちなみに、多くの人がきっと気になっているであろう、「ちはやふる」の”ふる”がなぜ濁点のつく”ぶる”ではないのか。

それは、平安時代は濁点が使われなかったため「ふる」と書いて「ぶる」と読み、いまでは「ぶる」表記になっているものも多いものの、タイトルに濁点をつけたくなかったことと、「ふる」の方が細胞の揺らめきみたいな繊細さが感じられて、見た目も響きもカワイイと思ったから。

また、小学生くらいの子供がはじめて古典の札を見たとして「ふる」と書いて「ぶる」と読むとは思わないだろうという考えと、実際に原作者が幼少期にそう読めなかったから名付けたとのこと。

小倉百人一首それぞれの歌に込められたストーリーをもとに、登場人物たちの青春を描くという作品自体の構成は、本当によくできているなと思う。漫画1巻につき、二首ずつをテーマにストーリーを作っても、ざっと50巻分の展開は可能。頭いいな。

また、この作品で外せないのは主題歌の「FLASH」。本編が終わっても心地よい余韻が残る。”百人一首”と”デジタルサウンド”という真逆のものを合わせることを斬新だなぁと思いつつ、作品のテーマにぴったしと合う。

競技かるたは一瞬一瞬の勝負の世界。1,000年の歌い継がれてきた歌を一瞬で払いあう。その刹那性が主人公たちの青春の短さとうまく重なっていた。

最後に、予告編を2つ。


いやー、素晴らしい企画をありがとうございます。目黒シネマさん。

このタイミングで再び観られてよかった。自分もあれくらいの情熱を傾けたい。そして、続編が待ち遠しい。

原田先生の「青春全部懸けてから言いなさい」に改めて痺れる。頑張らねば。

“近江神宮参拝の為に滋賀県に行く”という、やりたいことが増えた。できれば和装を着て。

みんな、どんなふうに働いて生きてゆくの?

働き方研究家の西村佳哲さんの著書。奈良の図書館で開催された「自分の仕事」について考えるフォーラム。そこで行われた8名のゲストとの対談を掲載。

西村さんの本でいうと、下記文章が印象的。

ところで、私たちが会社から仕事を買っているとしたら、そこで支払っている対価はなんだろう。それは「時間」である。そして時間とは、私たちの「いのち」そのものである。

実は自分はこの言葉がキッカケに、大学で「仕事論」を学び始めたということもあったり。確かこの本

今回紹介する本作でも、思わずハッとさせられる一節が多い。ので、記録的にご紹介。

1.誰に向いて働くんだっけ?というお話

…売上げを何十億と増やしていくより、うちのような規模のところが増えたらいいと思っています。そうしたらマーケットが広がりますよね。世界のフェアトレード業界の趨勢は、最近は拡大志向です。普通の企業のように力をつけようとしている。でも大きくなると組織は腐敗していく。最初の目的がおかしくなって、生き残ることが目的のようになってしまう。私たちは「生産者が北極星だ」ってよく言うんです。判断に迷った時は、常に生産者を見ましょうって。彼らにとって良いか悪いか。それも目の前のことではなく、5年後、10年後にどうだろうって。…

2.まずは3年続けろ?というお話

…子どもの頃から本が大好きで、就職の面接でも「編集者になりたい」と言っていて。「君、編集の仕事をわかってんの?」って副社長に質問されて、「いやわかってないです」と答えたのを憶えている。本当にわかってなかった。
 でも始めてみたらめちゃめちゃ楽しい。文章を読んで、その書き手に共感して、一緒に本を作りたいと手紙を書いて、意気投合する瞬間があって。そして、最初の打合せの時には想像もできなかったものが形になることが結構ある。働きながら、「僕は日本一楽しい仕事をしている!」っていう思いが、いきなりガーンときていました。
 人が3年かかると言うところを1年でと、土日も返上して仕事に燃えていた。けどある日、「最近旅してない」って気づいたんです。
 僕は学生の頃から旅が好きで、就職の直前も一ヶ月くらい中国を放浪していた。会社に入った後もその旅から戻った勢いのまま働いて、何冊も本をつくって、いくつかは話題になったり売れてもいたけれど、自分がどんどん社会化されてゆく感覚が一方にあって。
 売れるとか売れないとかそういうことより、本気で「面白い」と思うことや、内側から湧き出てくるものを追求しなけりゃ。無休で働いてはいるけど動いてないな・・・と思った瞬間、辞めたんです。辞表には「世界進出のため」って書いて。…

3.お金と関係性のお話

…言い訳としては、「お金が要る」とか「行き先はどうするんだ」とか。考えるといろいろ出てくるので、「もうちょい先だな」って。でも要するに腹が決まってなかったんですよ。
 次の建国記念日にしようって。お金はなかったけど、ないから出来る旅もあるなって考え方が変わって。お金ない方が僕らしい旅ができるんじゃないかなと。
 ヤップ島以来、お金のことを考えていたんです。お金ってけっこう関係性を切るんじゃないかって。お金があれば、誰に会わなくても、口もきかなくても旅が出来る。払えば泊めてもらえるし、電車にもバスにも乗れるし、別に何のコミュニケーションも要らないじゃないですか。僕は人間弱いですから、お金があったらそういう楽な方を選ぶんじゃないか。逆にお金がなかったら、いちいち人と関わることになる。それは今の自分に必要なことでもあるなと思って。実際なかった。部屋の敷金が返ってきて、それが所持金のほとんどでした。…

4.首都圏からは見えない東京のお話

…日々農産物を収穫しながら、「つくった米を盛る器も自分で作らないと」って、登り窯をこしらえて焼いてたり。最近は富山大学の研究室と一緒に山の水を活かした小水力発電の実験もしていて、電気自動車を走らせていたり。彼らを見ていると、限界どころか希望しか見えなかった。
 奥さんと話していた時、彼女にボソッと「東京こそが限界だと思うのよね」って言われて。言い返せないというか、グサッと刺さって。
 地域活性化ってよく言うけれど、多くの場合、どうやって経済を回すかという話になりがちですよね。でもお金が回って、人が多くなって、ヒト・モノ・カネが揃えば活性化するなら、そのモデルは東京になります。その東京で本当にみんな幸せに生きているのかっていうと、いや、いると思いますけど、東京で豊かに暮らせている人たちは結構お金のある人たちだと思う。
…今、水俣は国内有数の環境モデル都市で、世界的にも有名で。公害問題が深刻化した当時は、住んでいた人たちも「水俣」っていうアイデンティティを消したくて、街から出れる人たちはみんな余所へ移ってしまったり、人々の多くが地域と向かい合っていなかった。けど今は”環境”というキーワードで、新しいつながりが生まれている。無農薬のお茶をつくっているとか、無添加の海産物をつくっているとか、そういう人たちが集まっていて。会う人会う人が、みんな輝きを放っていたんです。
 希望を見ようとした瞬間に、絶望さえ希望に変わって、一人の人間が変わって、それが周囲も変えていって。そんな姿を見ていると、限界っていうのは物理的な条件のことじゃあないなって。…
…僕は今まで、「あれがあったら幸せになれるのに」とか「お金があったらいい暮らしができる」とか、そういう考え方を繰り返してきた感じがする。肩書きや職業のようなものも含めて。
 でも彼らは、なにかによって幸せになろうとしてないんですよね。この世界で生きていくって、腹が決まっているんですよ。そこで生きてゆかなければならない。ということを受け入れて、その上でいかに良い人生を送るかっていう覚悟が感じられて。僕が訪ねた地域には、そういう人が多かった。彼らはないものねだりをしていない。そして誰によって「限界」と決められることもなく、その状況の中で、思い思いに生きている。それでいいんじゃないかって。…

5.教育ってどうあるべきだっけ?というお話

…そして経済軸の判断は、どんどんプロセスを省略する方へいく。効率のいい方へ仕事の中味がショートカットされていって、その極端な形が「お金をお金で買う」ビジネスです。会社買うたりね。汗をかく必要がない。
 それは人間を、それも若者や子どもを損なっていく致命的な考え方だと思うんですよ。「こういう勉強して何になんねん?」みたいなことを言う。消費と同じ要領で、教育にコストパフォーマンスを求めている。でも本来、学ぶということは、自分が何をわかっていないかもわかっていないわけです。その初めの時点で「何になんねん?」なんて問いを立てていたら、何にもならへんだろうし、誰にも学ぶ必要ないじゃないですか。…

その他にも、なるほど。と思わせられることが多い一冊。

今の仕事をどうしようか。と考えている自分には割と刺さったな。