気になったとこをメモします。
- ナイキの強さ
- スポーツアパレル業界において、アディダスやアンダーアーマーが景気後退による減収を補うためにECでの販売価格や仕切り価格(卸売価格)を値下げし、利益率を90%近く落としたが、ナイキは世界トップの売上規模と利益率を維持し、時価総額最高を記録(21年)
- 時価総額を年間の売上で割ったPSR(株価売上高倍率)でナイキは4.8倍、アディダスは2.3倍、アンダーアーマーは1.6倍(21年)
- 営業利益率で見ても、17年から21年の平均値をとってナイキは12%、アディダスは9%、アンダーアーマーは4%
- 価格を下げるのは簡単だが、上げるのは難しい。下げるの理由はいらないが上げるのには理由がいる。一度下げてしまうとなかなか元に戻せない
- 最も利益に貢献するのはコストダウンや販売数量のアップではなく、価格の改善
- 値決めは経営の死命を制する。値決めで経営は大きく変わるため、経営者が判断すべき重要な仕事となる
- ナイキはこれまでの販売実績から商品の価値を推定し、目標とする利益を達成できる水準でMSRP(メーカー希望小売価格)を決定。また新しいコンセプト、デザインの商品にはスキミング・プライシングを適用し、競合よりも高い初期価格を設定
- スキミング・プライシング:新製品の市場投入時に高価格を設定し、初期の需要を最大限に活用して早期に資金を回収する価格戦略
- 日本企業が価格設定を苦手とする理由
- データの問題
- 価格検討のインプットとして何のデータを使うべきかが定義されていない
- 使いたいデータが取れていない、集めるための工数がかかる
- ガバナンスの問題
- 組織として統制が利いておらず、エリアによって値付けの方針や利益率がばらばら
- 価格の決済基準が統一されておらず、レビュアーによって異なる指摘を受ける
- ノウハウの問題
- 競合と同等もしくは少し安い価格に設定するというポリシーしかない
- アンケート結果をもとに値付けしているが、想定よりも売上や利益が伸びない
- システムの問題
- Excelで価格を検討しているが、扱える情報量が限界を超えている
- 商品や売り先の更新がすべて手動であり、情報の鮮度維持業務がパンク状態
- データの問題
- ハイブランドの価格はブランドエクイティそのもの、高い値段に設定することで、手が届きそうで届きにくい憧れのブランドとなる
- 国間の価格差が大きくなると転売が発生するため、本社がグローバルの価格水準を統制することが一般的
- 分譲住宅はいかに土地を安く仕入れ、早く売り切るかの回転率勝負
- 販売価格は土地代、建築費、販管費に利益を乗せて決める
- その際、近傍のプロジェクトが平均いくらで販売して売り切るのに何か月かかったかの情報を参考にする
- 販売価格は土地代、建築費、販管費に利益を乗せて決める
- クルマの価格は相対感と市場価値で検討
- 相対感は比較対象となるセグメント(車格)に属する別の車種と価格を比較するアプローチ
- 市場価値は、車種・グレードごとに異なる性能と仕様の面でクルマとしての価値がいくらであるべきかを探るアプローチ
- ドラッグストアの特売はメーカーとドラッグストアがタッグを組んで企画
- 特売によって、どれだけ売上や利益がアップするかをメーカー側が予測し、それを原資として仕切り価格を割り引く
- 飲料の価格は、自動販売機も店頭も横並び
- 特にスーパーからは消費者目線での店頭価格が指定されるため、メーカー側はその中で原価をやりくりする必要がある
- 家電は商品のカテゴリ、スペックによって売れ筋の価格帯が決まる
- 値ごろ感のない商品は、いくら優れた機能を備えていても売れないというのが家電業界の商習慣
- 昨今はメーカー側が価格決定の主導権を持つ価格指定制も登場
- 価格指定制:家電量販店などの小売店に製品の販売価格を指定する代わりに店舗からの返品を受け付け、在庫リスクを負担する仕組み
- デジタル広告は入札で価格が決まる
- インプレッション単価(CPM)と広告の質(ビッティングスコア)でビットが成立
- そもそも広告は顧客獲得単価(CPA)の効率性を以下に上げるかがポイント
- 広告主は自社の目指すCPAにLTVが見合う媒体のビッドに参加している
- 位置情報サービスはまだ10年の歴史しかなく相場が定まっていない
- 位置情報の価値も顧客の利用目的によって変わる
- 先駆者であるドコモのモバイル空間統計の価格が基準として用いられるのが一般的(22年時点)
- 商品・サービスの価値の構成要素
- 自己表現価値:自分のステータスに寄与するもの
- 例:自動車 ⇒ 高級車が成功の証
- ブランドごとの担保:ハイブランドで最大、一般ブランドで最小
- 例:自動車 ⇒ 高級車が成功の証
- 情緒的価値:商品・サービスの感覚的な効用
- 例:自動車 ⇒ 走る歓びが感じられる
- ブランドごとの担保:ハイブランドで大、一般ブランドで小
- 例:自動車 ⇒ 走る歓びが感じられる
- 機能的価値:商品・サービスが提供する機能
- 例:自動車 ⇒ 走行性・安全性
- ブランドごとの担保:ハイブランドで小、一般ブランドで大
- 例:自動車 ⇒ 走行性・安全性
- 根源的価値:商品・サービスの基本的な役割
- 例:自動車 ⇒ 乗っていどうができる
- ブランドごとの担保:ハイブランドで最小、一般ブランドで最大
- 例:自動車 ⇒ 乗っていどうができる
- 自己表現価値:自分のステータスに寄与するもの
- プロスペクト理論
- 人は「得」をしたときの嬉しい気持ちよりも「損」をしたときの残念な気持ち方が上回る
- 利益を得ることより、損を回避することを選ぶ傾向にある
- そのため、消費者に損を感じさせてしまう価格は購入意欲を削ぐ
- 現在の日本のように市場が成熟した状況において、売上至上主義は必要以上の値下げや販管費の増加を生み、利益率を悪化させる
- 経済が縮小均衡していく中で重要なことは、売上を追い求めることではなく、持続可能な利益を志向すること
- 「プライシング」は商品・サービスの価値を見極め、価値を価格に転嫁し、狙った利益に転換するプロセス全般を指す
- 「価格」はプライシングのプロセスにおける一つのパラメーターとしての位置づけ
- プライシングにおいて最も重要なことは商品・サービスの価値の見極め
- 価値ベースでの値付けをマーケットイン、コストベースでの値付けをマークアップと呼ぶ
- 顧客の価値が大きいと感じるほど、もしくは価格を割安と感じるほどカスタマんーバリューは大きくなる
- 価値を正しく見極め、マーケットインで値付けすることが望ましい
- ハイブランドの価格はブランドをどう位置付けたいかという思想とともにあるべき
- ブランドの位置づけ、市場でのポジショニングをはっきりさせなければ値決めの主導権を競合や顧客に奪われる
- 価格は、過去の売上実績、競合商品、サービスの価格をもとに、目標とする利益を面積で達成できるポジションに設定
- 自己表現価値を充足させるために必要以上に安くしすぎてブランドイメージを棄損しないように留意
- ハイブランド以外の価格は機能的価値の見極めがカギ
- 価値の差の定量化には、市場調査×顧客調査を用いる
- 市場調査:自社や他社の他の商品・サービスがその機能の追加で価格をいくらアップさせているか、どこまでの価格アップであれば許容されているかを確認し、機能ごとに市場価値を金額換算する
- 顧客調査:PSM分析などを行い、機能的価値が加わることでどれだけ価値アップが許容されるかを定量化する
- 価格決定基準
- 価値基準
- 3Cに準えると・・・顧客視点(Customer)
- 消費者の立場で商品・サービスの価値がどれだけあるかをベースに価値を設定、マーケットイン
- 競争基準
- 3Cに準えると・・・競合視点(Competitor)
- 競合との兼ね合いや代替品の有無など、競争原理や市場で形成された相場観に基づいて価格を設定
- コスト基準
- 3Cに準えると・・・自社視点(Company)
- ある一定数の利益率を原価に掛けたり、原価に狙った利益を加えて価格を設定、マークアップ、コストプラスとも呼ぶ
- 消費者心理基準:
- 3Cに準えると・・・顧客視点(Customer)
- 人間の心理がゆがみとなって合理的な意思決定を妨げることがある、見せ方の工夫でより売れやすい価格を設定
- 価値基準
- プライシングの実務における変革ポイント
- ①市場・競合の調査
- 市場規模、各プレイヤーのシェア、販売数量、価格動向、商品動向などを最低限抑える
- ②ガイドラインを作成
- ノウハウを形式化することで、属人性を排除し、業務の質的向上に貢献することを目的に、価格設定の方針や業務プロセス、評価体系を整理し、明文化
- ③比較対象の理解
- 消費者が商品・サービスの購入を検討する際、他の何を比較としているかを明らかにする、その際代替商品・サービスが何かという視点も重要
- ④原価企画と連動
- 赤字を垂れ流す商品の上市を未然に防ぐために商品開発を起案するタイミングで定量的なエビデンスをもとに販売数量、販売価格、原価、利益を想定
- ⑤価格を設定
- 今のプライシングモデルがどう成り立っているかをメーカー希望小売価格、代理店マージン、仕切り価格、製造原価、販管費といったパラメーターを使って可視化、あるべきプライシングモデルに向かってどの部分をどう変革するかを議論
- ⑥価格を評価・再考
- 価格は一度設定して終わりではなく、その後の売れ行きをウォッチしたり、消費者からのフィードバックを得たりしながら適切なポジションであったかを評価・再考
- ⑦ガバナンスを強化
- 価格の起案から決裁までのプロセスの円滑化、エリア間の価格整合を図るためのガバナンスがキーとなる、ガバナンス強化にはマインドチェンジも重要、全社的な収益管理の目線を持つCMOが指揮官となり、オペレーション全体をコントロールし、プライシングの専任担当を置きつつ現場を束ねるのが有効
- ⑧プライステックを実現
- 価格の検討に必要なデータ管理、シミュレーションなどに全てエクセルで対応するのは難しく、ビッグデータやDXを活用したプライシングをシステムなしに実現するのは不可能に近い、分析の切り口や画面イメージを要件としてクリアにし、システムの導入につなげる
- ①市場・競合の調査
その他、実際のサービスに関するケーススタディやら、プライシングの具体的な手法の紹介など結構面白かったので、興味のある方はぜひに。


