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十二人の怒れる男

アメリカ映画史に輝く傑作「十二人の怒れる男」を観ました。実に刺激的で知的。

内容は、日頃から不良と言われているスラムに住む18歳の少年が、「父親を飛び出しナイフで刺し殺した」として第一級殺人罪で死刑に問われる裁判の後、無作為に選ばれた12人の陪審員達は、評決の為に夏の暑い日に困憊した状況で陪審室に引き上げてくる。投票し、全員一致の場合に「有罪」か「無罪」かが決まり、有罪の場合は電気イスが確定するという状況。殺人事件に対する評決を下すまでを描いた法廷劇。

40年も前の映画なのに少しも古臭さがなく、思わず「ちょー面白い、なんだこれ」と呟いてしまいました。自分自身が納得できる意見を持つこと、納得いくまで議論し尽くすことの重要性。当たり前すぎることではあるものの、そんな当たり前を描いた本作を観て、最後は感動を覚える。それは当たり前のこととして、実践されることがなかなかないということの裏返しなんでしょう。自分自身も裁判員になる可能性があるという立ち位置で観ると、ますますこの作品の凄さを感じました。

果たして少年が本当に有罪であったのか、無罪であったのか。それは当人のみぞ知るところであり、「真実」が記憶や他人の発言、メディア、自分の思い込みで出来上がるものであるにしろ、自分の中の「真実」が正しいのかどうかを疑い続けなければならず、感情が先行してもいけない。そして、自分の感情を抑え、疑うということはなかなか難しい。

そういった人を裁くこと、真実と向き合うことの重さをずっしりと感じさせつつ、劇中であぶり出される男の本性?性?といったものがたまらなく滑稽で滑稽で。ただ、その滑稽さもこの作品の味であるという。白人男性のみで、移民批判をしだす人物もいて….といったところには流石に時代を感じましたが。

そして、この映画で出てくる場面が主に会議室とトイレと法廷くらい。9割型は12人が議論をする会議室のみで展開するのに、全く退屈しない脚本、撮影、演出、出演者が凄すぎると思いました。ブラボー。

現代でいうところの、MARVELの”CGどーーんっ!”といったような、それはまるで暴力であるかのような映画達と比べると、こういった製作費を切り詰めて完成した素晴らしい映画はまさにお手本のようで、ますます素晴らしく感じます。

終盤にさしかかり、登場人物一人ひとりの性格を観客が認識し始めた頃になると、一人か二人をアップで映すカットが増えて、より緊迫した空気を表現していたのも良かったですね。心理学を勉強している人はもっと面白く観れるかもしれません。