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IT企業が実施している中途入社者向けのオンボーディング施策を調べてみた。

最近ちょっとした課題感がありまして、他社って何してるんだろう…と思い、ざざざっと調べてみました。

下記、順不同かつネットから拾ったものの中からこれはレアだな、と思うもののみを記載しています。(よって会社ごとに行われている施策を全網羅していません)

また、課題感とセットではないと意味がない、というのもおっしゃる通りかなと思いつつ、一旦は施策ベースで幅広さを見たかったために抜いています。

施策が生まれた背景などを知りたい方は恐れ入りますが、参照URLより確認してくださいませ。

1. GMOペパボ

ペパボカクテル

中途入社者を社内の専用チャンネル「カクテルチャンネル」に入れて歓迎、なんでも聞ける場にする。

ペパボテックフライデー

エンジニア組織全体の社内勉強会、毎月第2金曜日に約2時間かけて、外部の勉強会でのシェア内容や社内で起こった事象をアウトプット。

ランチワゴン

毎週火曜日・木曜日に様々な事業部のエンジニアとランチに行く制度。

やっていきシート

ペパボでやっていきたいことを専用シートに1か月目、2か月目、3か月目のそれぞれに分けて記載。

参照:https://hrnote.jp/contents/b-contents-soshiki-pepabo-cocktails-20190917/

2. ミクシィ

Slackアプリの活用

Slackアプリを活用して温かみのある文面を自動シナリオ配信。(画像を見たほうが早いので下記参照をぜひ)

参照:https://note.com/mixi_design/n/n7bda23172a67

3. コネヒト

クイックウィンの支援

「クイックウィン」とは、長期視点での目標を見据えつつ、短期・中期でも成果を目指す方策のこと。内定時、最初の90日間でその人に期待する目標をドキュメントで提示。

参照:https://hrnote.jp/contents/c-contents-sogo-onboardingtoha-190626-2/

4. 日本オラクル

5週間研修

新しく入ったメンバーが会社の印象を決めるのは、最初の1ヶ月ほどだと考えており、営業社員向けの「5週間研修」を実施。

5週間研修
1週目:集合研修で、会社や組織、ルールなどオラクルの基礎を学習
2週目:時間割に沿ったOJT(上司がグローバル標準のテキストを使って教えたり、eラーニングで単元ごとに自己学習)
3週目:自分が担当する製品を中心に、機能からツールまでをOJTで学習
4週目:再び集合研修をおこない、ロールプレイングを通じて、これまで学んだことの習熟度を確認
5週目:上司と習熟状況を確認し、お客様とのコンタクトの取り方などを練習

OJTは現場の上司以外に、ナビゲーターやサクセスマネージャーがついて伴走。

ナビゲーター:現場の先輩社員が務め細かい会社のルールや、細かいサポートなどをおこなう
サクセスマネージャー:社員エンゲージメント室が担当して、入社者の「成功」にコミットする役割(カリキュラムが思うように進まない、と相談されたときは、2人目のナビゲーターを指名する、上司にペースアップを頼むなど

2人メンター制

現場の上司とは別に2人のメンター(教育担当・サポート担当)を新入社員に付け、役割を分けてサポート。

参照:https://hrnote.jp/contents/c-contents-sogo-onboardingtoha-190626-2/
参照:https://www.dodadsj.com/content/170912_oracle/

5. LINE

LINE上で相談窓口を設置「LINE CARE」

オンボーディングにおけるホテルのコンシェルジュ的存在として、パソコン操作や福利厚生、社内カルチャー、人間関係の悩みなど、あらゆる相談が可能なLINE上の窓口を設けている。

参照:https://www.jmam.co.jp/hrm/column/0027-onbording.html

6. CAMPFIRE

入社前交流会

入社まで1ヶ月以上の期間がある方を対象に、所属チームメンバーとの入社前交流会(オンライン)を実施。

Communication Partner制度

新卒・中途問わず、新メンバーに対して組織理解とコミュニケーションを促すために、所属事業部外のメンバーがパートナーとして1名つき、オンボーディングをサポートする。

参照:https://note.campfire.co.jp/n/ncbf59308f96f

7. メルカリ

必要なものをポータル(社内Wiki)に集約

新人が欲しい情報がオンボーディングポータルにアップされており、新人はそこにアクセスすれば何をやれば良いかがわかるようになっている。

オンボーディングの達成度合いを定量測定

オンボーディングの達成度合いを測るため、技術領域ごとに各自のKPIを設け、サーベイで進捗確認も行っている。オンボーディングの状況を感覚ではなくデータで可視化することで、個々人に適切なサポートを届けられるようにしている。

参照:https://www.hrbrain.jp/media/human-resources-development/on-boarding-2
参照:https://www.hrpro.co.jp/series_detail.php?t_no=2393

8. overflow

正社員、業務委託に差をつけない一元管理

コミットメントスタイルに関わらず、全てのメンバーの情報を一元管理。具体的には、業務委託の方々にも、SmartHRのアカウントを1人1つ付与して、人事データの情報を管理する。

業務委託契約の自動化プロセス

業務委託でジョインしていただくことが決まったら、Talentio上でその方のステータスを「選考中」から「入社」に変更する。すると自動でSlackに繋がり、その方への様々な招待が送られ、必要な情報が提示。

オンボーディングワークを用意

オンボーディングキットで得られた知識を使って、様々な課題に取り組んでいただくことで、実際に使える知識を習得してもらう。

参照:https://note.com/overflow_inc/n/nbe6160f23b03

9. iCARE

専用チャンネル「iCARE Backstage」

内定承諾後、iCAREから招待されたSlackのチャンネルにログインしてもらい、コミュニケーションを実施。入社当日にチャンネルから卒業して、一通りのインプットが完了。

参照:https://note.com/taji_hikasen/n/n0456676e9674

10. Moneyforward

MVVCを浸透させるための入社グッズ配布

詳細は参照URLをご確認くださいませ。

参照:https://note.com/akariy/n/na898760267d6

11. Meety

ウェルカムページの配布

事業・組織・その他必要事項に関する説明を集約した専用ページを作成。

参照:https://note.com/gokitarie/n/nc8bc86b0aef1

12. LAPRAS

19個の会社全体を理解するプログラム

入社後1ヶ月間で19個の会社全体のオンボーディングプログラムを用意。

既存社員30人全員との1on1

自身で作成したプロフィールを見せあいながら雑談する場を設ける。

毎週末、毎月末にアンケートを実施

最初1か月は毎週末、それ以降は1か月毎にアンケートを実施。

1ヶ月目に「卒論」(改善して欲しいこと)を提出

①入社前と入社後のギャップ、②プロセス・制度上改善すべきことの2点を箇条書きで提出してもらう。

参照:https://note-corp.lapras.com/n/n08f4273d4682

13. Ubie

カルチャーガイドの作成

ビジョン→事業戦略と事業特性→組織戦略と人材要件→行動指針 という構造になっており、大上段から日常の行動のDo’sDon’tsまで一気通貫でUbieというプロダクトを解説。

Ubie Discovery カルチャーガイド (社外公開版)

オンボーディング完了状態を定義

新メンバーとメンターが共に目指すゴールとして、まずは状態を明文化。

メンバーがSuccessするまでのジャーニーを整理

オンボーディング完了までのプロセスと、各プロセスにおける関係者の役割をジャーニーマップとして整理。

参照:https://note.com/sonopy/n/nd7a42c136784

14. hey(STORES)

「セルフディスカバリーシート」を作成

自己対話→発見を促すための専用シートを用意し、社内で声をかけ参加者で一斉に書く「もくもく会」を実施。

マネジャー用ガイド・説明会を実施

話を聴き、受け止める側は、どんな構えで、どんな対話ができたらよさそうなのか、というガイドを作成し、1on1実施をサポート。

内定者向け「入社控室」

毎月の全社総会の動画や社内報を内定者でも見れるようにするページ。

参照:https://note.com/halcafe/n/n7d8d0e240297
参照:https://twitter.com/adwarf/status/1431098176904130570?s=20&t=3Gn0CoYkMPYDdVWHSEc5_Q
参照:https://note.com/takinoharuka/n/n358ebd3a79b9

15. アル

Slackのワークフロー活用

新入社員は指示に従って進めていくだけで、初日オンボーディングの大半が終わる仕組みを構築。

参照:https://note.com/nobuuuu/n/n888875c805c4

16. SMARTCAMP

初めて行うタスクをめちゃくちゃ丁寧に説明する

こちらもnoteを参照。とてもわかりやすい。

参照:https://note.com/smartcamp_design/n/n8dbf767c47f9

17. atama plus

プロダクト・事業・組織を理解する、全53個の研修プログラム

各種制度の説明はもちろん、組織体制や事業・プロダクト戦略から、各チームの役割やプロダクトの仕組みまでをも理解するプログラムを実施。

全員で大切にしていきたい価値観をカルチャーコードとして言語化

カルチャーは一度作って終わりではなく、全員で磨き続けることが大事という前提に立ち、カルチャーについて理解を深め、すりあわせる取り組み「カルチャーガーデニング」を実施。

atama+ culture code

チーム内外の仲間と信頼関係を築く、スター施策

入社3か月までのメンバーを「スター」と呼んでいて、スターを対象にしたさまざまな施策を行う。

参照:https://note.com/atamaplus/n/n784633783a19

18. ポテンシャライト

入社100日目のパーティー

入社100日目にパーティー(お祝い)を実施。

逆フィードバック会

1ヶ月/2ヶ月/3ヶ月で会社に対して意見を言う会を設定。

参照:https://note.com/pote_academy/n/na4493453de9a

19. 令和トラベル

ワークショップ形式の研修でMVVの理解を深める

ただMVVを座学として聞くだけではなく、自分たちの言葉で置き換えて理解するようなワークショップ形式で行う。

参照:https://note.com/reiwatravel/n/n3c7074253a06

20. grooves

1on1を1ヶ月間毎日実施

毎日30分1on1で話す時間をつくり、「ちょっとした事すぎて聞くことを躊躇してしまう疑問」に答える。

学んだことを社内に共有してもらう

新メンバーから既存メンバーに対して積極的に情報発信をしてもらう。

参照:https://note.grooves.com/n/n899ee4e7f60b

21. ビットキー

ファーストゴールを掲げる

オンボーディング期間である60日以内にはじめて出す成果を設定してもらう。

全社から称賛を集める渾身の一枚「コンイチ」

オンボーディング終了のタイミングで、渾身の一枚スライド(通称:コンイチ)を作成し、Slackの全社員が参加するチャンネルに投稿。

参照:https://note.com/bitkey/n/nc96cd4ef3710

22. FOLIO

全社員参加可能の1on1を実施

全社員が自由に出入りできる新入社員との1on1を毎日実施。

参照:https://note.com/foliobackstage/n/nefa77a683cac

23. カカクコム

スキルヒアリングの実施

業務に必要とされる知識や技術がマインドマップ形式でまとまっている資料が存在し、初日に確認。不安のある項目があればフォローの提案を実施。

参照:https://note.com/tabelog_frontend/n/n47017bf79a34#cUJQ9

24. モノタロウ

自部門全体の業務内容を調べ、他部門の方にプレゼンテーション

対象者は入社3ヶ月~半年程度の中途、新卒併せた新入社員の方々。同時期入社の30名程度が一度に参加し、2日間にわたって実施。

参照:https://note.com/monotaro_note/n/nb70ec84047f9

25. Retty

社内カジュアル面談マッチング「RettyMeety」の実施

話したい社員に対して面談を申し込める仕組みをつくり、雑談する機会を担保。

参照:https://note.com/retty_inc/n/n77d1e1a2f836

26. HERP

Meは何しにHERPへ?

HERPメンバーのHERPで働くまでの経緯を自己語り形式で深堀りする企画。

1ヶ月後の360°フィードバック

1ヶ月での働きに対して自分が関わったメンバーからのフィードバックをもらう。

参照:https://note.com/uxkong/n/n803b7efa9a95#D6LLo

27. YOUTRUST

「ほめほめ」コーナー

毎週水曜日の1コーナーとして現場メンバー同士で素晴らしい動きをほめ合う。

定期的な頻度でのオフライン合宿

四半期に1回程度、オフラインでの1Day合宿を実施。

スローガンを毎Q作成

2022年7〜9月のスローガンは「Be Positive!One Team!」だったとのこと。

参照:https://note.com/kadomai/n/n0c3014c016fd

28. フラー

机の制作

新メンバーは、自分の後に入ってくるメンバーのための机を手作りする。

参照:https://note.fuller-inc.com/n/nd488a558fcb5

29. freee

価値基準を解釈することをサポートするゲームコンテンツ

価値基準をより自分らしい考え方や行動へ置き換えたり、解釈することをサポートする、「Value Card(※)」というゲームコンテンツを実施。

参照:https://note.com/atsunorinomoto/n/n0f3546cb373a

30. BASE

入社前Welcome Box

WFHの環境で快適に働けるよう、2020年4月以降入社する方全員に送る。

入社直後8回まで利用可能なメンターランチ

入社から2ヶ月の間、合計8回までランチ代の補助を行う制度。

参照:https://basebook.binc.jp/entry/2021/09/15/130259
参照:https://basebook.binc.jp/entry/2021/07/30/160000_1

と、一旦30社ほど。追記するかもしれませんが。

atama plusさん、LAPRASさんあたりの設計がとても緻密ですごいなーと思いました。

上記には載せてないですが、VISIONALさんの考え方がとても体系的に整理されていたので最後に貼っておきます。

3年間のオンボーディングで培われた、リモートでも効果的な7+3のプラクティス – Visional Engineering Blog

なんで僕に聞くんだろう。

cakesで人気だった連載「幡野広志の、なんで僕に聞くんだろう。」のうちのいくつかが掲載された一冊。

実は、「2019年にもっとも読まれた連載」「1000万人が読んだ人気連載」が待望の書籍化!!!とのこと、恥ずかしながら全く存じ上げなかった。

筆者はがん患者であり、余命数年の写真家。そんな彼に投稿者から寄せられる人生相談に、綺麗事や建前ではなく、本音で真摯に向き合う。

知らない人たちの人生相談なのに何故か読む手を止められない。

時にクスッと笑えるユーモアも交えながら、相談者たちの肩の荷を軽くするような人間性は読んでいるだけで惚れ惚れしました。

(もちろん、感謝していることを前提として)

下記、特段気になった一節。

 最初に断っておきますが、ぼくは不倫が悪いとはおもいません。離婚を悪いこととも失敗ともおもわないし、ぼくが死んだあと妻が再婚を願うなら、あの世から背中を押してあげたいです。
 配偶者って、自分が選べるゆいいつの家族です。親きょうだいも親戚のおっさんも選ぶことはできないけど、自分の夫や妻は選べるんです。家族選びに失敗したら、かえりゃいいんです。
 たくさんの不倫相談に目を通していて、気づくことがあります。それは自分を偽っている人があまりにも多いということです。負い目を感じているためなのか、
自分を綺麗に見せようとする人ばかりです。
 不倫相談をするかたがたがよく使う言葉があります。それは「大切」という言葉です。
 彼には大切な家族が…..、私には大切な子どもが…..。
 日常会話ではわざわざ大切なんていいません。ぼくは息子のことを紹介するときに、大切な息子です、とは紹介しません。こういう話を聞くたびに、「大切」という言葉には、邪魔という意味が込められているんだなぁっていつも感じます。
 「今の彼の子を産むつもりはありません。彼の大切な家族を壊す気持ちはありません」
 相談者さんのこの一文、ぼくにはこう読めます、きっと本心はこうでしょう。「彼の子が欲しいです。私にとって邪魔な、彼の仮定が壊れてほしいです」
 そんなことはない、と否定されるなら、いますぐ別れましょう。彼の大切な家族のためです。彼にとっては大切でも、あなたにとっては邪魔なだけです。

 この相談はお母様にはしないほうがいいとおもいます。「『普通に結婚して就職するように』というお母さんの期待に応えたい」ということですが、普通ってなんですか?江戸時代の普通と平成最後の普通って違います。”普通”は時代で大きく変化するものです。
 親のいう普通って、だいたい親が経験した時代の普通ですよ。
 親子ってだいたい30歳ぐらい年齢が離れているものですが、30年もたてば時代って変わります。あなたが37歳ということは、お母様は67歳くらいでしょうか。親があなたとおなじ年齢のころ日本はバブルです、肩パッドで風を切りながら歩く時代ですよ。
 当時の男性の生涯未婚率は6%、非正規雇用者の割合は20%です。おったまげですが、これがお母様の時代の普通です。現在では男性の生涯未婚率は23%、非正規雇用者の割合は40%です。これがぼくたちの普通です、チョベリバ。…

 …「普通」という言葉に気をとられないでください。時代は変わりました。いろんな環境の人がいます。これからの「普通」は多様性です。いろいろな幸せの価値観があります。あなたがしあわせならそれでいいんです。

 ドラえもんにでてくる、ジャイアンがぼくは嫌いです。人をボコボコにしてモノを奪って、映画になったら急に善人になる。どんなDV男だよ。
ぼくはジャイアンのお母さんはもっと嫌いです。ジャイアンの意見には耳をかさず、やりたくない店番をさせ、暴力でジャイアンを服従させる、それでいて妹のジャイ子には漫画家の道を許す。ジャイアンがイジメっ子になったのには理由があります。

 「頑張れ」と言えませんでした。(お父さんのことを)否定しないぐらいしかできないですよね…とかなり謙遜しておっしゃってるけど、医療従事者でもないのにそれができてるってたいしたものなんです。なんでできているのか教えてほしいぐらいです。
 自分の話になって恐縮だけど、ぼくは親戚の言葉にいちばん傷つけられました。匿名のネット中傷やクソリプみたいなものなんてたいしたことなくて、正義感や善意がたっぷりの、たまたま血がつながっているだけの、年齢が親世代の親戚の言葉のほうが、遠慮もないから本当に面倒なの。
 父方の叔父からは「親より先に死ぬのは親不孝だぞ、治療をやりきれ」といわれました。
 不可能な要求を、亡くなったぼくの父の名前をかたっていうものだから、心が折れました。
 父の叔母からは、ぼくがやりたいことにたいして、まだ2歳にもなっていなかった息子を自分の顔の前に抱き上げて「パパそんなことやらないでぇ、一緒にいてぇ」と、息子がいっているかのようにいってきました。
 息子はなにをされているかがわからず、ぼくにニコニコしていましたが、ぼくは息子にたいして悲しい顔をしてしまいました。しばらく息子を苦しめているのではないかと落ち込みました。
 叔父のことは霊媒師、妻の叔母のことは腹話術師とぼくは呼んでいるのだけど、正直なところ、死ぬまで会わなくていいかな。
 あなたの相談を読んだとき、いちばん初めにぼくが感じたことは、あなたみたいな親戚が喉から手が出るほどほしかったなということです。本当に喉から手が出たら緊急手術しないといけないけど、それくらいお父さんがうらやましいという意味です。
 ぼくには否定せずに背中を押してくれる妻がいるけど、あなたみたいな息子さんがいるお父さんもうらやましいです。
 年齢はまったく違うけど、ぼくの息子とあなたのことがすこし重なってしまい、ちょっと泣きそうです。
 自信はないかもしれません、不安かもしれません、でもここでお父さまと向き合っておかないと、あなたの生きやすさにつながらないかもしれません。お父さまもそんなことは望んでいません。
 あなたとお父さんのボタンのかけ違いは、あとひと指で直せます。

 あなたは自分が被害者で、娘さんが加害者とおもっているかもしれませんが、まったく逆です。ちょっと前まであなたが加害者で娘さんが被害者だったの。過去にあなたの言動で娘さんを傷つけてしまっているんです。…

 親孝行という言葉がありますが、これはお金を払い続けた人が老後にもらえる年金のようなものです。子どもが親を大切にしたり、感謝したりすることが常識とおもわれがちな社会ですが、子どもを大切にして、子どもに感謝した親が享受できることです。
 自分のことを大切にしてくれなかった人を、どうして大切にできるんですか?従業員のことを大切にしている企業の社員は会社が好きになるので、たのしそうに働きます。娘さんの「汚い、近寄るな」という言葉にすべて集約されています。
 嫌いな人間とは会話をしたくないし、おなじ空間にすら一緒にいたくないでしょう。深夜に帰宅するのは、できればあなたと一緒にいたくないからです。

 そこまで娘さんがあなたのことを嫌いなのに、16歳で男性経験をすませたことや、ツイッターで男性を探しまわっていることを、どうしてあなたが知っているのですか?ただでさえ家族というのはテレビドラマを見ていてうっかりキスシーンが流れると気まずくなるぐらいなのに、こんな話題は、よっぽど親子関係が良好でないといいたくないものですよ。
 カフェで親子でデートして、娘さんからうれしそうに彼氏ができたことを教えられたわけでも、ツイッターを一緒にやりながら「ママ、この人どうかなぁ」と相談されたわけでもないでしょう。
 勝手な想像ですが、あなたが問い詰めたかスマホを強制的に見たのでしょうか。あなたはツイッターを制限すればいいとおもっているかもしれませんが、そんなことは根本的な解決にはなりません。娘さんに必要なのは、親のお金を盗まなくてもいい環境、深夜に帰宅しなくていい環境、買春をする男性の偽りの優しさに惹かれなくていい環境。
 18歳の娘さんが持ってるゲーセンのぬいぐるみを疑うって、ぼくからすれば親の非行です。あなたが娘さんを疑うように、娘さんもあなたを疑っています。
 親子関係というのは積み重ねです。あなたの積み重ねの結果がいまの娘さんです。子どもが大人に成長したあとの親への態度は、親が子どもにしていた態度です。
 娘さんに変わってほしければ、あなたが変わるしかありません。

 ぼくは死ぬことを肯定的にとらえています。健康なときからずっとそうです。こういうことをいうと、ギャーギャーといわれちゃいそうなんだけど、人に対して死ぬ死ぬといっているわけじゃなくて、死ぬことを否定しないという程度のことです。
 だからぼくは自殺をまったく否定しません。ただ本当に自殺を実行する人には、自殺の失敗だけには気をつけるようにいいます。自殺したいほど苦しんでいる人が選んだ死です。それを否定する人って、結局は自分が悲しみたくないだけですよ。あなたの周りにもあなたのことを否定する人、たくさんいるでしょう。
 「自殺したらダメだ」という言葉って一見綺麗だし、倫理観的にも正しいですよね。でもこの言葉で、自殺したい人はさらに追い詰められるだけなんです。だって、ただの否定と押し付けだから。
 はっきりいってしまいますけど、健康な人からすると、自殺したい人の話って面倒なんデスよ。自分の一言がきっかけで死なれても困るし、オレだってがんばって生きてんだっておもっちゃうし、だから「死んじゃダメだ」って自分のために相手を否定するしかないですよね。
 これって「黒ひげ危機一発」にソックリなんです。黒ひげの悪人顔がぼくに見た目ソックリという話ではなく、構造がソックリということです。
 みんなナイフが刺さっていないときは何も考えずにナイフを刺して、だんだん穴が減ってきていよいよ飛びそうになってくると、とたんにどこに刺そうか考え出すんです。運のゲームだから考えたって無駄なのに。そもそも考えるなら、最初の一本から考えればいいのに。
 黒ひげが「自殺する人」、ナイフが「否定する言葉」です。最後のナイフで黒ひげが飛んだようにおもうけど(というかあれはそういうゲームだけど)、じつは否定の言葉を刺した全員で殺しているんです。あなたの自殺をいま否定する人は、あなたが本当に死にそうだから否定するのです。でも、あなたの入ってる樽に余裕があったときにナイフを刺してきた友人は、なにも感じないですよ。そもそもナイフを刺した感覚もないだろうし。
 「健康な人からすると、自殺したい人の話って面倒なんデスよ」と書きましたが、本音をいえば自殺する人と関わりたくないんでしょうね。みんな死んじゃダメっていうけど、コストをかけて自殺を止める人は極めて稀です。ちなみにこのデスはdeathとかけています。誤変換ではありませんデス。
 すこしまえに、自殺する人が最後に電話をかけて相談する全国規模の団体で、講演をしたんです。対象はその電話を応対する相談員のかたがた、一般のかたは対象外でした。つまり自殺したい人と日常的に話をするかたがたです。「なんでぼくに聞くんだろう?」って感じた最大のピークはこのときです。
 人手不足のなか、電話は一日中鳴り続けるそうです。彼らは講習を受けたボランティアで、訓練を受けた医療者ではありません。イライラして怒鳴り付けてしまったり、「しっかり生きろ」と説教をしてしまうこともあるそうです。ぼくはその話を聞いて、最後の自殺を止めるどころか自殺を促してしまっていると危機感をもちました。
 「まずは自殺することを否定せずに、肯定してあげてください。いつでも死のうとおもったら死ねるんだから、いま生きる方法を一緒に考えましょう」
こういうように、と電話相談員に伝えました。しかし彼らのほとんどは納得のいっていない顔をしていました。

 これは健康な人には理解されにくい感覚かもしれません、でもあなたにはわかるんじゃないですか?ぼくも病気になって自殺を考えましたが、自殺したいときにいちばん苦しかったのは自殺を否定する人の言葉です。

 褒められたときに居心地の悪さを感じてしまうのは、きっと自信がないからなんでしょうね。自分に自信がなくて、自己評価と他者評価がうまくマッチしていないから、居心地が悪いのだとおもいます。
 36歳にもなってなにをいってんだっておもわれそうですけど、この自信のなさって結局のところ、子どものころに褒められなかったことが原因だとぼくはおもいます。
 中学校のころのぼくと、いまのぼくの国語能力はほぼ変わりません。子どものころも言葉を知りませんし、文法はわからないし、漢字も書けませんでした。
 だから国語の成績がすごく悪かったんですよ、もちろん国語だけじゃなく他の教科も悪かったです。写真家なんて自称していますが、美術の成績もバツグンに悪かったですよ。
 親は成績しか見ていないから怒りますし、同級生からもバカにされるわけです。子どものころのぼくは、ドラえもんがいないのび太のような子どもでした。
 ダメな子であると周囲から評価されていたので、自分でもダメな子なんだろうとおもい込んでいました。
 だから自信なんてあるわけないじゃないですか。この環境で自己肯定感が高い人間になれたら、逆にちょっとヤバいでしょ。
 親戚や一部の知人あるあるなのですが、さいきんになって、村から勇者でも出たかのように褒めたたえるわけですよ。子どものころは学校の先生が評価した成績で怒られて、36歳になったいまでは、世間の誰かが評価した言葉でぼくを褒めるわけです。
 言葉を紡いじゃってますけど、どれだけ褒められようと、評価そのものを褒められるのはとても虚しいものです。
 褒められてうれしい感覚はぼくも理解できるのですが、これって安かったときに買っていた株が高騰してよろこんでいるうれしさと一緒ですよ。株価が急落したら怒るか、もしくは他人のふりをするわけです。
 結局、誰かの評価でしか人を見ることができない、すこし悪くいえば見る目がない人たちなのだとおもいます。
 ”注目株”になったことでたくさんの人から会いたいといわれます。撮影の仕事も文章を書く仕事もたくさんいただきます。
 ぼくの写真や文章がいいと感じてくれて、仕事を依頼してくれたり、話を聞きたいとおもって、会いたいといってくれるわけです。”ぼくの評価”を評価しているのではなく、”ぼく”を評価してくれることなので、本当にありがたいことです。
 病人になろうが、注目株になろうが態度を変えない人の存在に、ぼくは救われてきました。だからぼくも病人になろうが注目株になろうが、態度を変えないように心がけています。ちょっと皮肉な話ですが、自信のなさがあるから、天狗にならないでいられるのかもしれません。
 そして変わらないということが、とても難しいことであることも理解できました。

 学校の先生って文章の書きかたを教えてくれませんよね。文章の書き方を教えないで、いきなり自由に書かせる作文の授業って、いったいなんのためにやってるんでしょうね。
 子どもの作文ってびっくりするほどみんな似てます、アホな男子の書き始めはだいたい「ぼくは」です。
 ぼくはいまでも、ぼくは…からはじめることばかりです。書き始めってなんて書けばいいんだろ?
 よくよく考えてみると、美術の授業で美術館には行かないし、美術に触れることなく自由に描かせますよね。音楽の授業だって合唱を聴かせることなく、いきなり合唱させるわけです。
 インプットがないのに、アウトプットができるわけないじゃないですか。大人だって見本や手本がないとできないのに、なんで子どもには手本を示さないのだろう?

 あなたの質問の答えになっているかどうかわかりませんが、もしも、ぼくが学校で作文を教える先生だったら、「ウソはつかない」ということを教えるとおもいます。
 ウソをつかないというのは、作り話をしないということではありません。作り話ができる子だったらもっとおもしろい作り話ができるように、ぼくはきっとその方向性でのばします。
 ウソというのは、おもってもいないことを書くことです。
 平成から令和になったわけですけど、小学校低学年ぐらいの男の子がテレビに街頭インタビューを受けていました。「平成が終わるけど、どうですか?」という、年齢に対して質問内容がまったく合っていないアホな質問をされていたのですが、その男の子は「ちょっとさみしいです」と答えていました。
 この男の子はそんなことおもってないわけですよ。ぼくも昭和を5年ほど経験しましたが、平成に変わったときに、ちょっとさみしいなんておもわないわけです。それよりもテレビが皇室関連のことばかりでつまらないなぁとおもっていました。
 子どもが困ったすえに出した答えなんです、インタビューしてる記者も笑顔で、きっと親も笑顔なんですよ。大人の顔をみて答えているんです。
 きっと学校の作文の授業も、子どもの学力向上や文章能力を高めることが目的ではなく、大人がよろこぶためのものなんでしょうね。いったい誰のための授業なんだろう。
 本音で書くというのがぼくは大切なことだとおもいます。自分が日々感じていることや、自分がたどりついた答えを、ウソをつかないで書くということをぼくは心がけています。
 誰かをよろこばせるために書いているわけではないので、誰かがよろこんでも、もしくは誰かが怒っても気になりません。
 ウソをついた文章ってすぐにわかるんですよ。あなたもウソをつかない文章を書いてみてください、そんなに難しい話ではないです。暑い日に暑いとおもうことや、美味しいラーメンを食べて美味しいとおもうこととそんなに変わりません。

 一部の遠慮を見失ってしまった親や親戚ほど、黙って見守る、困っていたら助けてあげるという大人の対応ができません、黙っていられない、お節介な人たちです。
 自分が経験した子育てが絶対だと信じて、新しいものを拒否してきます。例えば子育てにスマホやタブレットを活用するのを否定しがちだったりします。
 良いところを残して、新しいものをとりいれなければ、何事もよくなっていきません。
 100年前なんて東北の農家の娘は売られていたわけです。いまの時代が最先端でいちばん良いんですよ、社会はぼくたちでどんどん良くしていくの。
 黙って見守る、困っていたら助けてあげる。というのは子育てにおいてとても重要なことだとぼくはおもうのですが、そんなこともできない人に子育てのことをいわれたくないですよね。
 「親になれば、わかるよ」なんてよくいったりしますよね。ぼくはまだ3年しか親をやっていませんが、それでも親になっていろいろわかったのは、親世代のダメさですよ。
 「親になれば、わかるよ」というのはじつは「親になったら、バレるよ」です。
 親にならなくても、大人になるってそういうことじゃないですか。子どものころは30歳ってすごく大人に感じたけど、実際に30歳になってみて、自分のこと大人だと感じますか?やっぱりバレちゃうんですよ。

 …そしてね、愚痴だったり不幸な話というのは、じつは聞いているほうはすごく精神的に負担なの。人の不幸は蜜の味ってよくいうけど、あれは不幸な話を甘い蜜にしてくれるミツバチさんのテクニックなのよ。不幸な花粉だけなら、くしゃみの連発です。
 ぼくは不幸な花粉話を聞かされることがよくあるんだけど、まったく話は聞いていません。もちろん相手を黙らせることはしませんが、聞いているふりして、3億円の宝くじが当たったら何をしよう?っていう妄想にふけっています。
 冷たいとおもわれるかもしれないし、愚痴ぐらい聞いてあげなよっておもわれるかもしれないけど、まともに聞いていると、どんどんこちらのメンタルが削がれてしまいます。3億円の妄想は、心を穏やかにするための、ぼくなりの防衛策です。
 3億円の使い道は、好きな本や好きな道具を販売しつつ、内装やグラスにちょっとこだわったカフェをやるという、絶対に失敗する事業パターンにいつも着地します。

 愚痴だったり不幸な話だったり、波瀾万丈の話は、なるべくおもしろく話せるようになったほうがいいよ。そうすればみんなすすんで話を聞いてくれるから。オレの話を、私の話を聞いてもらえない。聞いてもらえないものだからビャービャーいってしまう。….って人がけっこういるんだけど、あれってやっぱり話がつまんないから聞いてもらえないんだよね。
 穏やかな人生を送ることというのは、心のありかたや、考えかた次第だとおもうよ。あなたが波乱万丈だとおもえば、波乱万丈だし、穏やかとおもえば穏やかです。気楽に生きようとおもえば、気楽です。
 誰かの価値観で決めることではありません。どっちがいい人生かあなたが選べばいいの。

 ぼくは妻にたいしても、再婚したければどんどん再婚すればいいとおもっています。でも、もし妻が再婚するとなると、ギャーギャーと彼女に文句をいってくる人がいるとおもうんです。永遠の夫婦愛や夫婦の絆という感動ポルノに泥酔した人たちだとおもいます。
 「夫を病で亡くして、悲しみにくれつつも懸命にがんばるシングルマザー」というドラマをおつまみにして、苦労とか貧困まで追加でオーダーするような感動ポルノにベロベロに酔っ払った人が、妻をしあわせにさせまいと邪魔するんですよ、勘弁してほしいよね。妻よ、ラクに生きてくれ。
 あなたのいう「しあわせになるうしろめたさ」って、生きている誰かの目や、大衆居酒屋感動ポルノを気にしてるんでしょ。そんなの気にしなくていいよ、人の目を気にしてしあわせにならないなんて、死ぬまえにすっごい後悔するよ。
 死ぬまえに後悔している人ってけっこういるんです。これには一つの共通点みたいものがあって、人の目を気にして生きている人ほど、死ぬまえに後悔をしているようにぼくは感じます。
 そして人の目を気にして生きてきた人ほど、人の目を気にして死んでいくようにも感じるから、人の目を気にする生きかたはやめたほうがいいよ。
 傍若無人やワガママになるということじゃなくて、自分にとってのしあわせや好きなことがなんなのかよく考えて、好きなことをしたり、しあわせを享受できるように自分の駒を進めていくことが大切だとおもいます。
 ただ、あなたにとってのしあわせは、他の誰かにとってはしあわせではないかもしれません。それくらいしあわせのかたちというのは多種多様です。結婚とか出産とか、ドラマが描くようなしあわせのかたちがあるけど、それが日本人全員のしあわせとは限らないです。

 ”加害者になった元被害者”というのは、ぼくも付き合えません、無理です。そりゃ綺麗事や道徳的なことをいえば、話を聞いて受け止めてあげるべきなんでしょうけど、ぼくにもぼくの人生があるので無理です。
 加害者になった元被害者というのは、金銭や収入の問題でよく見かけます。さいきんも「12年勤務して手取り14万円『日本終わってますよね?』」というツイートが話題になっていましたが「そんなの大したことはない、オレは月収12万円だ」という旨のコメントをたくさん目にしました。
 加害者になった元被害者の人がもしも人を雇う立場になったときに、きっと12万円で人を使ってしまうんですよね。月収12万円がかなりきついって知ってるはずなのに。加害者になった元被害者というのは、自分がしたつらい経験を、人にもさせようとする人ですよ。負のスパイラルを増長させるような人です。
 あなたは周囲を恨んでいない、それどころか若い人に同じ轍を踏んでほしくないとおもっているわけですよね。負のスパイラルには入ってないですよ、それどころかそれを断ち切ろうとしているわけで、ぼくからすれば立派な人格者ですよ。
 あなたみたいな人ってなかなかいません。フィクションのような綺麗事ストーリーにはたくさん登場してくるけど、救済者になる元被害者っていそうでいません。
 ぼくはあなたみたいな人が、若い人を指導や育成する側になるべきだとおもいます。

世間にはいろんな悩みを抱えた人がいるんだな…というのをリアリティを持って体感できるのが、視野の狭まった自分にとっては貴重な一冊でした。

細かい言及は避けるものの、自分も家庭環境やら友人関係やらに苦しんだ経験があり、共感できる節も多々。

レベルは全く違うのだろうし、もちろん、感謝してもしきれないくらいなのは前提として。

なんてこと書くものではないですね。反省。

「キリンを作った男」を読みました。

猛烈に面白かった一冊。一瞬で読み切った。

マーケターは全員読んだ方がよいのでは?と、半ば強引な思いに駆られています。

キリンビールと聞いて連想するであろう「一番搾り」「ハートランド」「端麗」「のどごし生」「氷結」….。といったヒット商品の数々を作った方(前田さん)のお話。

ああ、優秀なマーケターの商品開発話か、と思いきや、実は「ハートランド」はキリンの代名詞だった「ラガー」をぶっ潰そうとして企画した商品だったり、過去の成功を捨てきれない企業体質と真っ向勝負で戦ったその生き様に思わず息を吞む。

巨大企業であるがゆえ、一言居士を貫く前田さんはどうしても煙たがれる。そんな社内政治との闘いのくだり、そして成功体験を捨てるまさにアンラーニングの挑戦なんかは、マーケターでなくてもリーマンとして働いている勢なら誰しも刺さるかもしれません。

また、キリン一強時代にアサヒがとった戦略、スーパードライの脅威、などなど、日本でビールが一番盛り上がっていた時代における現場のリアルを体感できる点も最高でした。

以下、印象的だったエピソード・部分をメモとして少しばかり。

どうしたら口コミを起こせるか。どうしたらペイドではなくパブリシティーができるか
…前田がたどり着いたのは、次の6つのポイントだった。

①一つの商品にたくさんの情報価値=語りたくなる、伝えたくなる価値を盛り込む
②発信しようとする情報を受け手の身になって考える、整理する
③時代を読む
④関与者を多く作る
⑤即効性のあるメディアほど情報感度は鈍い。雑誌→新聞→ラジオ・テレビの順番を意識する
⑥追い駆けるより追い駆けさせる構造を作る

今でも学びがありますが、80年代半ばから上記に取り組まれていたという凄まじさ。

昨今のデジタル時代に現役のマーケターとして活躍されていたとしたら、どんなポイントを掲げるだろうか。

社内外を問わずさまざまな人々と交流し、人脈を築いていった。その1人が舞踏家の田中泯だった。
…前田仁と田中の出会いは、「ビアホール・ハートランド」の開業イベントで、舞踏公演を依頼したのがきっかけだった。
前田ははじめ田中の舞踏を理解できなかった。それでも、前田はそこで終わらず、何度も劇場に通って理解しようとした。そうやって見ているうちに、「途中、頭で理解することをやめると、舞踏が身体の中にスーと入ってくる感覚に襲われた」という。
この体験について、前田はこう記している。
「この原体験は仕事上でも役だったと、いまでも考えている。既成概念を壊し、新しいものを創るという点で踊りと商品開発は似ているからだ」
桑原(前田さんの上司)は「成功体験を捨て、既成の価値観を超えよ」と言っていたが、この一文はその桑原の教えとも重なる。
「成功体験が大きければ大きいほど、忘れられない記憶として我々の中に刷り込まれます。周囲の環境が変わっていても、どうしてもその体験を捨てきれないのです。そして、大きな失敗を犯してしまいます。成功体験と同様に、我々は多くの既成概念にも取り巻かれて生活しています。その既成概念も、所与の条件のように我々の思考と行動を支配します。それから抜け出す為にはどうしたらよいか。何時も自分の思考を真っさらにしておくことが必要です」
「自分の思考を真っさらにする」ため、前田は幅広くさまざまな人々と交流していた。田中泯のようなアーティストのほか、広告代理店、広告クリエーター、建築デザイナー、リサーチ会社の関係者など、実務家の人脈も広い。

一流には一流が引き寄せられるのかもしれないものの、意識的に多ジャンルの学びを活かしていきたいもの。

ここ3年ほどの積極的に人に会いにくい時代を恨みますが。個人的にフリーランス→大手企業への転職で圧倒的に人に会う数が減ったことに漠然と持っていた危機感をぐさりとやられた感覚です。

当時、前田の部下だった舟渡は、こう証言する。
「『ロングセラーに変える消費者たち』(ダイヤモンド社)という本が前田さんあてに送られてきました。千葉商科大学の教授をしていた熊沢孝さんの本でした。前田さんは忙しかったので、代わりに私が読んで、内容を教えろと指示されました」
『ロングセラーに変える消費者たち』は、ハウス「バーモンドカレー」や、グリコ「ポッキー」など、さまざまなロングセラー商品を分析していた。
名古屋工場時代、舟渡は、発酵学や生産管理の専門書を数多く読んでいた。ただ、マーケティングの本を読むのは初めてだった。舟渡は、新しい世界に触れる興奮を覚えながら、要点を自分なりに整理して、前田に提出した。
「1つ、企業の思い入れが感じられること。
2つ、オリジナリティがあること。二番煎じではダメ。
3つ、本物感があること。
4つ、お客様が得した感じを抱けること。要するに経済性です。日本の消費者は経済性が好きで、メーカーはその分、損をしがちです。
5つ、親しみやすさがあること。個性が強すぎるものは嫌われます」
舟渡の話を聞いて前田はこう言ったという。
「いいじゃないか。これでいこう」
こうして「一番搾り」の方向性がまとまっていった。

これはもはや、いつでも暗唱できるようにしておきたい。

「スーパードライ」の発売当初、キリン社内では、「あんな水っぽいビールが売れるはずがない」と言われていた。
だが、いまや「スーパードライ」は「ラガー」を圧倒し、キリンはシェア1位の座を明け渡すところまで追い詰められている。
一方、発表種ブームを前に、キリン社内では次のように言われていた。
「発泡酒はビールではない。まがいものだ」
キリンの人間は、ビールのプロだ。キリン社内の意見は「ビールのプロ」としては至極もっともな意見で、まさに「正論」である。
ただ、問題は、その意見が「正しいかどうか」という点ではなかった。消費者の感覚と一致しているかどうかが、もっとも重要な問題だったのである。
一般の消費者は「ビールのプロ」ではない。それゆえ、消費者の感覚は、往々にして「ビールのプロ」の意見とはズレる。
こうした「ズレ」を捉えることこそ、消費者理解の核心であり、ヒットを生むコツだと、前田は考えていた。
そうした前田の狙いが最高度に発揮されていたのが、「端麗」というネーミングだった。
「発泡酒は本来使うべき麦芽をケチった、安いビールだ」
キリン社内の人間も、発泡酒のことをこう考えていた。一方、前田は、「消費者は『安物』を求めていない」ことを見抜いていた。
「安売り王」ダイエーの「バーゲンフロー」は、大失敗に終わっていた。
消費者は安いビールを買っている。だが、「安物」を買いたいわけではない。あくまで「お得な商品」を買いたいのだ。
「ビールにあまりお金をかけたくないが、できるだけ本格派のビールが飲みたい」
その微妙なニュアンスを、前田の鋭敏な感性は見事に洞察していた。その結果、前田はあえて、カジュアルさを排した漢字2文字の商品名を採用したのである。
「端麗」のネーミングを最終的に決める際、前田は次のような消費者調査を行っている。
中身は同じだが、「カジュアルな商品名」の発泡酒と、「淡麗」のラベルの発泡酒の2種類を飲み比べてもらい、それぞれ「飲みたいかどうか(飲用意向)」「買いたいかどうか(購入意向)」をたずねたのである。
その結果、「カジュアルな商品名」の発泡酒は、飲用意向、購買意向ともに振るわなかった。
一方、「淡麗」のラベルを貼られた発泡酒は、飲用意向、購買意向、ともに満点だった。
中身は同じにもかかわらず、ネーミングによって消費者の受ける印象が大きく違う。「完璧」と言っていいほど、予想通りの調査結果を前に、前田は会心の笑みを浮かべていた。

これは、奇遇にも私が勤めている会社が掲げるフィロソフィーそのもの。

なかなかこの感覚を常に強く持てるメーカーも少ないはず。

もともとキリンの商品開発部では「ラガー」や「一番搾り」と「発泡酒」が競合しないように腐心していた。
一方、前田は「ビールが減っても、それ以上に淡麗が伸びればいい」という方針を打ち出し、「淡麗」が「ラガー」「一番搾り」と競合することもいとわなかった。
それは、かつてのキリンでは考えられない「発想の転換」だった。この前田の判断を、「マーケットの創造的破壊に挑んだ」と評したマーケターもいたという。
前田には勝算があった。
当時、景気が拡大していたアメリカでも、価値の安いエコノミー商品が販売量の6割を占めていた。ましてや、不況にあえぐ日本で、発泡酒が売れないはずがなかった。
90年代も終わりを迎え、人々の意識やライフスタイルは大きく変化しつつあった。仕事が終わったあと、上司が部下を連れて縄暖簾をくぐり、「とりあえずビール」で乾杯する光景もだんだん減っていった。
そんな中、特に若い世代には、「お酒はプライベートで楽しむもの」という考え方が広がりつつあった。自腹で飲むなら、少しでも安いお酒のほうがありがたい。
そうしたニーズに応える「淡麗」の大ヒットを、前田は確信していたのだろう。

いわゆる、イノベーションのジレンマに陥る社内において、この発想を柔軟に持つことの意義を感じます。

迎えた98年2月3日。
この日開かれた「淡麗」の発表会の席上では、完成していた「淡麗」のサンプル品も配布されていた。
アナウンスされた発売日は2月25日。ほかの開発チームが束になっても、まるで進まなかった発泡酒の新商品を、前田はたった4ヶ月で開発してみせたのである。
しかも、前田にとっては、子会社から本社に復帰して最初の仕事だった。普通では考えられないようなスピード感である。
なぜこんなことが可能だったのだろうか。
その理由について、上野は次のように語る。
「前田さんが一人でやったからです。淡麗の開発では、上司に確認をとる必要がありませんでした。前田さんは商品開発部の部長であり、一人のマーケターでもありました。だから、前田さんは自分でプランを考え、自分で決裁することが可能だったのです。逆に、そうでもしなければ、たった4ヶ月で新商品を開発するのは不可能だったと思います」
猛スピードで商品化された「淡麗」だったが、決して「やっつけ仕事」ではなかった。
いざ発売されるや、「淡麗」は消費者から熱狂的な支持を受けたのである。
当初の販売目標は、98年12月末までに1600万箱だったが、実際には目標をはるかに上回る3979万箱を売る。

と、紹介したらキリがないのだけど、かなりおススメです。

部下が処分を受ける際、自分も同じ処分を受けることが条件だ、と人事部に伝えたエピソードなど、尊敬する上司像としてもすごく素敵な方でした。

次に部下を持つタイミングができたら、課題図書にしたい一冊。