年別アーカイブ: 2014年

潔く柔くを観たら、オッサン化する自分を感じた。

いくえみ綾のコミックが原作の映画、「潔く柔く」を観ました。

最近流行りの”いくえみ男子”が素敵に活躍?する作品です。

あらすじは、高校1年生の花火大会の夜、カンナはクラスメイトから告白されるも、同じ頃、大切な幼なじみのハルタが、カンナの携帯にメッセージを残したまま交通事故に遭い、亡くなってしまう。そのことで恋が出来ないまま社会人となったが、出版社で働くロクと知り合う。無遠慮で悩みなどないように見えるロクだが、自分と同じように心に大きな傷を持っていることを知り…..という感じ。

言うて、漫画のファンでもなく原作を知らない人間として観たので、原作ファンの方にしたらもうそれはそれは”お前分かってねぇなこんちくしょー”的に思われるかもしれませんが。書きます。(ネタバレはないはず。)

コミックが原作の恋愛映画って、これまでも何本か観る機会があったんですが(まぁ一人ではなかなか観ないんですが)、”わーお、いかにも漫画っ”って感じのものが多く、ツッコミどころ多いなぁ…と思ってしまうことがどうも多くて。

でも、この作品はそんなスタンスにはならなかったんですよね。まぁ高校の同級生に長澤まさみ×波瑠×高良健吾×中村蒼の四人がいて、仲良しグループとしてつるんでるという状況はwhat’s?って感じなんですが(いや、まぁでもイケメンはイケメンとつるむし、そこそこ可愛い人は可愛い人とつるむものか。あの現象は何故なんだろう。というか、全国諸々そうなんだろうか。)。

本当にいそうな素朴なキャラクターをリアルに描いている分、わざとらしくなくてなかったんでしょう。きっと。(そういうところが漫画がヒットしている要因なんだろうか。と思ったけれど、漫画はキラキラしてるんだろうか。機会があれば読んでみたい。)

長澤まさみと波瑠に関しては、高校生を演じるのはちょっと無理があるだろうと思っていたけれど、あんくらい大人びた高校生、そういえばいたなぁ。って思えなくもない。ぎりぎりでした。本当にぎりぎり。ごく少数めちゃめちゃちやほやされるような。まさに”マドンナ”と称されるような。

あんな高校生がいたら、学校生活楽しいでしょうな。背が高く、べっぴん。スカートの丈が非常に健全。(視点がおっさんだ。やばい。)それに加え、男性キャスト陣は、安定して高校生っぽかったっすね。この差は何だろう。

また、登場人物の服の着こなしが格好良い。決めすぎないあの感じ。素晴らしいです。多分もっとオシャレにしようと思えばいくらでも出来るんだけど、でもわざと抜いている。その分着慣れている感がないと物足りない。でも物足りなく感じさせない。70%くらいの力でキメているといったような。

キャストに関して、池脇千鶴は何かしら抱えてる役をやるのが上手いし、岡田君は独特の空気感があるから、伊坂作品なり漫画が原作のものに引っ張りだこなのは本当に理解できました。

漫画が原作だからこそ、それなりの台詞もあるのだけど、二人とも臭い台詞を言わせてもさらっと観られるのが不思議でした。本当に自然。まぁ、池脇千鶴の真骨頂はジョゼか。 話変わりますが、岡田君はベージュの服が似合いますね。羨ましい。

そして、なんと言っても主題歌が素晴らしい。斉藤和義の「かげろう」。ぴったしですね。この映画の為に作ったからそうなんでしょうけれど。まぁノスタルジー感満載の楽曲がただただ好きなだけなんですが。

この作品独特の空気?も好きでした。主人公たちの部屋をはじめ、そして働いているオフィスのオシャレ感。主人公たちが育った町並み。これはロケ地巡りが流行ることでしょう。まぁ、社会人一年目?二年目?で、あんなに良い部屋に住んで、自分の趣味の延長線上の仕事(映画、出版)が出来る。そこの設定は漫画っぽいかな。(こういうことを考えてしまうのもオッサン化なんだろうか。いや、流石に中高生もそういうこと考えるんだろうか。)

ちなみに、ロケ地は、広島県福山市、坂町、呉市、竹原市、三原市、尾道市とかだそう。照明も白の色素が多いと言うか、光の当て方がとにかく柔らかくて柔らかくて。

映画の内容にちょっと触れると、この作品では「メール」が大きな意味を持つんですが、携帯のメールを送り合うあのドキドキ感って好きだったなぁ。というのを思い出したりもしましたね。携帯についているランプを見て、来てるか来てないかを判断するあの感じ。

メールだからこそ、送るタイミングはこちらが決めやすく、長い時間をかけられるから、文章の綾を工夫する猶予が生まれる。よって、趣のある文章を送れ、受け取れるあの感じです。はい。

ただ、そういうメールとかももう無くなっていくんだろうなぁ。そりゃあもうどんどんと。って思うと、ちょっと悲しくなりましたね。全てチャット形式になっていき、長い文章を送らなくなり、既読機能がついてストレスも感じ、最終的には文章を送らずともスタンプだけで用を足すとか。それはないか。(こんなことを言う自分も、デジタルネイティブ世代からすると、オッサンなんだろうかね。)

最後に一言。
観た人は分かるでしょうが、ゴキブリのくだり、めっちゃ好き。笑

十二人の怒れる男

アメリカ映画史に輝く傑作「十二人の怒れる男」を観ました。実に刺激的で知的。

内容は、日頃から不良と言われているスラムに住む18歳の少年が、「父親を飛び出しナイフで刺し殺した」として第一級殺人罪で死刑に問われる裁判の後、無作為に選ばれた12人の陪審員達は、評決の為に夏の暑い日に困憊した状況で陪審室に引き上げてくる。投票し、全員一致の場合に「有罪」か「無罪」かが決まり、有罪の場合は電気イスが確定するという状況。殺人事件に対する評決を下すまでを描いた法廷劇。

40年も前の映画なのに少しも古臭さがなく、思わず「ちょー面白い、なんだこれ」と呟いてしまいました。自分自身が納得できる意見を持つこと、納得いくまで議論し尽くすことの重要性。当たり前すぎることではあるものの、そんな当たり前を描いた本作を観て、最後は感動を覚える。それは当たり前のこととして、実践されることがなかなかないということの裏返しなんでしょう。自分自身も裁判員になる可能性があるという立ち位置で観ると、ますますこの作品の凄さを感じました。

果たして少年が本当に有罪であったのか、無罪であったのか。それは当人のみぞ知るところであり、「真実」が記憶や他人の発言、メディア、自分の思い込みで出来上がるものであるにしろ、自分の中の「真実」が正しいのかどうかを疑い続けなければならず、感情が先行してもいけない。そして、自分の感情を抑え、疑うということはなかなか難しい。

そういった人を裁くこと、真実と向き合うことの重さをずっしりと感じさせつつ、劇中であぶり出される男の本性?性?といったものがたまらなく滑稽で滑稽で。ただ、その滑稽さもこの作品の味であるという。白人男性のみで、移民批判をしだす人物もいて….といったところには流石に時代を感じましたが。

そして、この映画で出てくる場面が主に会議室とトイレと法廷くらい。9割型は12人が議論をする会議室のみで展開するのに、全く退屈しない脚本、撮影、演出、出演者が凄すぎると思いました。ブラボー。

現代でいうところの、MARVELの”CGどーーんっ!”といったような、それはまるで暴力であるかのような映画達と比べると、こういった製作費を切り詰めて完成した素晴らしい映画はまさにお手本のようで、ますます素晴らしく感じます。

終盤にさしかかり、登場人物一人ひとりの性格を観客が認識し始めた頃になると、一人か二人をアップで映すカットが増えて、より緊迫した空気を表現していたのも良かったですね。心理学を勉強している人はもっと面白く観れるかもしれません。

不器用で素敵な「向き」の映画

2012年12月13日、第70回ゴールデン・グローブ賞で、作品賞、主演男優賞、主演女優賞にノミネートされた作品です。

英国で一大ブームを巻き起こしたポール・トーディの小説「イエメンで鮭釣りを」を、「スラムドッグ$ミリオネア」のサイモン・ビューフォイ脚本、「ギルバート・グレイプ」のラッセ・ハルストレム監督で映画化。無謀な国家プロジェクトに巻き込まれた主人公の学者が奔走する姿や、プロジェクトにかかわる人間たちの恋や友情をユーモラスに描く。英国の水産学者ジョーンズ博士のもとに、砂漠の国イエメンの大富豪から、鮭釣りがしたいのでイエメンに鮭を泳がせてほしいという依頼をもちこまれる。そんなことは不可能と一蹴したジョーンズだったが、中東との緊張緩和のためにと外務省が支援を決め、首相まで巻き込んだ荒唐無稽な国家プロジェクトに展開してしまう。ジョーンズ博士役にユアン・マクレガー。共演にエミリー・ブラント、クリスティン・スコット・トーマスら。

小説を読んでから映画を観てしまうと、かなりがっかりするらしいこの映画。ちょっとストーリーが違うみたいですね。

まぁ「砂漠の国イエメンで、鮭を釣る。」という設定自体がかなり奇想天外で、映画にする際のインパクトは凄いものの、詳細な描写を読んでからだと「ん?」って思ってしまうんでしょう。納得といえば納得です。

ストーリー自体に関しては、かなり予定調和的でした。こうなるんだろうな。という感じで話が進んでいく。

それでも、いいなぁと思ったのは映像の表現方法。

「主人公が通常通り出勤しようとしたものの、ヒロインが心配で、家を尋ねるシーン」「溯上は出来ないとされていた養殖の鮭が、向きを変えて溯上し始めるシーン」というこの物語のカギを握るシーンがあるのですが、二つの象徴的なシーンを同じような撮り方で重ねて表現しているのがとてもよろしい。

この作品はおそらく「向き」の映画なんだろうと思いました。

・イエメンの砂漠地帯で鮭釣りするという当初ばかばかしいと思っていたプロジェクトにのめり込んでいく主人公の向き
・絶対に溯上できないとされていた養殖の鮭が遡上する向き
・戦地から帰ってきた昔の恋人と帰国せずに、主人公とともにイエメンでのプロジェクトを続けると決断するヒロインの向き
・アクシデントにより一時失敗かと思いきや、鮭が生きていたことによる希望への向き

全てUターンするんですね。
そのことが、主人公と鮭の映像で表されていたんじゃないかと思います。

そして、妻がいる研究者の主人公と、恋人がいる大富豪の代理人のヒロインの異国での恋愛がとても好きでした。一応この映画の括りは”ラブストーリー”なんだけど、ラブストーリーにしてはとても控えめというか、わざとらしさが全くない。ユアン・マクレガー演じる主人公の、ちょっとピントのずれた気弱な性格のおかげなのかな。

ところどころに含まれている笑える要素もイイ。特に首相と広報担当者のチャットの様子。政府を笑い者にする感じは、イギリス映画ならではといった感じかと。

にしても、美人ですね。エミリー・ブラント。どっかで観たなぁと思ったら「LOOPER」でした。
色白で青い目をしている西洋の美女は、黒髪の方が映えると思いますね。ただの黒髪フェチでしょうか。