ニキがひたすら可愛らしい。

昨日、山崎ナオコーラさんの「ニキの屈辱」を読みました。
まぁ大晦日に読むべきものなのかってところは定かではありませんが。

有名写真家のニキ、主人公の男の子の二人の写真家としての師弟関係、そして恋愛関係を描いた作品なんですが、すごいよかったです。

二人の距離感であったり、心理描写が心に沁みて。ほっとしつつも悲しい。

この作家さんのライトな作風がすごく好きですね。
そのライトさを心理描写の巧みさと、文章の無駄のなさでカバーしている感じがまた好きです。
無駄のなさといっても、きちんと読ませてくるところのセンスが素晴らしいんですが。

恋愛下手が恋愛に前のめりになる感じとか、男性としての心変わりとか、本当に自然で。その分、沁みました。
今回の場合はニキの不器用さと、加賀美くんの器用さが。(同じ男性として、加賀美くんのことはあまり好きではないですが)

加賀美くんは「差別」に関心があるという設定で、それはまぁ男性的だな。と思っていましたが、彼がニキに惹かれた理由もきっとプロとして有名なニキが他と違うからだったんですね。ただ、その”違い”は刻一刻と変わっていく。それをニキも加賀美くんも理解している。
ある意味ファインダー越しにお互いを見ていたんだな。と。それではうまくはいかない。

「恋愛は始まった速度で続けられない」ということを物語っていたように思います。

自分自身のもつ”芸術”を相手に教えてあげていたと思いきや、ある日突然、自分よりも相手の方が活躍していたりする。
恋愛に優劣感情はないにしろ、それを気にしてしまう加賀美くん。ある意味どうしようもないですね。

写真家としての自分がもう通用しないのではないか。と感じてしまうニキが不器用さがたまらなく切なかったです。
また、加賀美くんの右肩上がりで少し傲慢さが出てきた感じがそれを引き立てていました。

ニキのことばの一つひとつがとにかくかわいい。

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