よく使うものの、正直KPIとの違い等の解像度が低いままだったワードなのですが、最近たまたま読んでいた本にいいまとめがあったのでメモとして残しておきます。
そもそもノーススターメトリックとは?
「ノーススターメトリック」は、ビジネス本来の目的を見失わないようにするためのものであり、「プロダクトが顧客に対して価値提供できているかどうかを測るただ一つの」指標。
売り上げなどのビジネスの業績だけではなく、顧客側が体験する価値も向上する指標でなければならない。ノーススターメトリックを定めることで、組織全体を正しい方角へ推し進められるようになる。
例えば、slackでは「2,000回以上メッセージを交わしたグループの数」をノーススターメトリックに設定。
→ ユーザーがグループ内で繰り返しメッセージを交わしていることは、コミュニケーションツールとしての価値を感じてもらえている証明。
→ 反対に、「新規アカウント開設す宇」などは適さない。アカウント数がどれだけ増えようが、顧客側が体験する価値向上とは無関係。
ノーススターメトリックは「サービスを通じて人々の生活をこんな風に変えていきたい」という組織のビジョンを反映した指標。メトリックが誤っていた、事業内容が大きく変わったという場合を除き、基本的には長期にわたって追いかける。
KGI・KPIとの違い
KGI・KPIはあくまでも「企業目線」での評価指標。言うまでもなく、ビジネスの売上の伸びが顧客への価値提供を上回るようなビジネスは持続可能ではない。
企業目線での価値ではなく、顧客側から見た価値をも考慮した指標がノーススターメトリック。
世界的企業のノーススターメトリックの例
facebook・・・10日以内に7人以上の友達を追加したユーザーの割合
Airbnb・・・宿泊予約数
Spotify・・・音楽の総再生時間
Uber・・・乗車予約数
Netflix・・・1か月あたり動画総視聴時間の中央値
Slack・・・2,000回メッセージを交わしたグループの数
Amazon・・・1か月あたりの購入回数
Zoom・・・毎週開催されるミーティングの数
優れたノーススターメトリックが持つ6つの特徴
by 「Amplitude」のエヴァンジェリストの定義
①:価値を表す
「顧客が自社プロダクトのどこに価値を見出すのか」を表している。
②:プロダクトのビジョンと戦略を象徴する
この先、組織が成長して実現させたいこと(事業のビジョン)や、プロダクトを通じて何を実現させたいのか(戦略)が指標から見て取れる。
③:成功へ導く指標である
将来のパフォーマンスに影響を与える「先行指標」である。測定していても次のアクションにつながらない「遅行指標」ではない。
先行指標・・・将来の成長に影響を与える指標 例:商品購入回数、有料会員からの購入数、月間のコンテンツ総再生時間 など
遅行指標・・・ユーザーの行動結果/虚構の指標 例:売り上げ、ダウンロード数、ページビュー数 など
④:実行可能である
自分たちが影響を与えられる指標である。市場のトレンドや競合の動向など、プロダクトとは関係のない外部要因に左右されるようなものであってはならない。
⑤:誰もが理解できる
組織にいる誰もがすぐに理解できる。簡単に説明できなかったり、わかりやすい言葉で表現できないような、難解で抽象的なものであってはならない。
⑥:計測可能である
顧客にとっての価値を示す強力な指標だと思えたとしても、実際に数値で測定できないのであれば、それは良いメトリックではない。
(ただし「今あるツール」で測定できないだけで、新たなツールに投資することで測定できるようになるかもしれない)
ノーススターメトリックからKPIを設計する
KPIはノーススターメトリックを「広がり」「深さ」「頻度」「効率」の4つに因数分解することで求められる。
広がり(Breadth):ユーザー数(アクティブユーザーの数) KPI例:会員数、視聴者数
×
深さ(Depth):エンゲージメントレベル(ユーザー体験のレベルの深さ) KPI例:顧客単価、長時間
×
頻度(Frequency):再訪頻度(ユーザーがアクションを起こす頻度) KPI例:リピート回数、視聴回数
×
効率(Efficiency):タスク完了までの速さ(ユーザーが価値を感じるまでの時間) KPI例:初回購入までの日数
しかし、KPIを個別最適に追いすぎてしまった場合、数値は伸びてもユーザー価値が向上しないといったケースが発生してしまう。
その場合のポイントは、ノーススターメトリックやKPIを最適化し過ぎて、顧客・ビジネスに不利益を与えていないかを確認するための指標「カウンターメトリック」を設定すること。
<カウンターメトリックの例>
・メルマガの開封率が向上したら、解除率を見る
・広告のクリック率が向上したら、その先のコンバージョン率を見る
・無料トライアル会員の登録率が向上したら、有料会員の登録率を見る
・サイトの広告収益が向上したら、NPSを見る
カウンターメトリック自体は常に一定の数値を示すわけではないため、チームが改善に取り組む際の数値範囲を定めておくと運用がラク。
今回読んだ本はこちら。