年別アーカイブ: 2013年

SPECはどうして面白いのか。

今日、映画につながるドラマ「SPEC 零」の放映があるということで、SPECがどうして面白いのかをちょっと考えてみました。

1, なぜなら、俳優の演技力があるから

戸田恵梨香と加瀬亮。主演二人の名演技は外せないポイントでしょう。他スペックホルダーも凄い。神木くんの可愛げを漂わせながら狂気に走る演技も素晴らしい。

2, なぜなら、登場人物のキャラがいいから

天才故に変人、そして熱血馬鹿。だけど、生き方が真っすぐで人間としてカッコいい主演二人。二人を温かく見守る係長。個性が豊かすぎるスペックホルダーとその他の方々。一人ひとりのキャラが物凄く濃くて、それぞれがきちんと立っているから、コアなファンが生まれやすいんだと思います。(コアなアニメファンが生まれるようなイメージ)(でも、城田優の狂ったキャラは男子が見てもひどいですね)

3, なぜなら、ギャグを許容できる雰囲気があるから

係長がところどころでいれるギャグ。ぶっちゃけ一つ一つを見ると、そんなに面白くはないですよね。それをうるさくもウザくも思わせない作品自体が持つ雰囲気がなかなかなく、この作品の凄いところなんだと思います。はっきりとしたギャグではないんだけど、センスの良い知的な面白さが鏤められているから、ストレートなギャグが出てきた際に、違和感をあまり感じないのかもしれません。
(この雰囲気でつまらないと感じる人もきっといるはず)

4, なぜなら、監督が堤幸彦だから

ギャグ要素はいいとして、この監督の特徴としたら映像の独特なカット。東京都庁?東京タワー?赤坂?(詳しく覚えてないのですが)を上から撮影するカット。超人的な聴力を持つ桂小次郎が出たときのあの上からのカット等が特異で、他の作品ではなかなかないですよね。そして、ほんのりダークでシュールな世界観。ところどころ有名アニメ、ドラマのキャラクター、ネタを入れてくる作風。ドラマ最終回のエンドロールの終わりに、”映画かなんてぜってぇしねぇから”と当麻に言わせておいて、映画につながるドラマのエンドロールの終わりに、”東宝さんよろしくお願いします”と瀬文が言うというキャラを活かしたシュールな面白さが出来る雰囲気を醸し出せる作品を作れる監督が凄い。

5, なぜなら、主題歌がいいから

この作品の、なんとなくダークでごみごみした感じにめちゃめちゃマッチするんですよこれが。堤監督の指示で、ドラマ版は各回毎に楽曲にアレンジが入っているのも凝ってますよね。ドラマ版のエンドロールのデザインもオシャレなことオシャレなこと。

6, なぜなら、大ヒット作品の続編だから

主演2人に台本が初めて渡された時には、SPECというタイトルは決まっていなくて、ケイゾク2という名前だったという事はご存知ですか?主演の2人は、大ヒットドラマの続編ということで、かなり重荷に感じていたそうで。もともと中谷美紀と渡部篤郎のタッグでした。以下、wikipedia先生からの引用。

“ケイゾク”と呼ばれる、迷宮入りした事件を担当する警視庁捜査一課弐係(架空の部署)に配属された、東大卒のキャリア警察官僚柴田純と、元公安の叩き上げ刑事真山徹が難事件を解決していくミステリードラマ。シリーズ前半は持ち込まれる事件を解決する刑事物として、小ネタを散りばめたコメディー要素の強い一話完結のスタイルを採りつつ、シリーズ後半に向けての伏線を少しずつ描いてゆく。シリーズ後半では真山と快楽殺人犯朝倉の因縁を巡る物語をシリアスに展開させるという構成となっている。[1]タイトルの『ケイゾク』は「現在も鋭意“継続”捜査中である」という事に由来している。 警察の実情とは異なる設定が多いほか、これまでの刑事ドラマと比べ無機質で暗鬱とした雰囲気を醸し出しており、メイン演出の堤幸彦による演出スタイルは新鮮さと特異性に溢れていた。過去の刑事ドラマへのリスペクトを感じさせながら、2000年代以降につながる斬新さを持つドラマであるとも評価されている[1]。

竜雷太も野々村係長として出演していて、ケイゾクを元にしたネタもSPECには出てきます。

7, なぜなら、挿入曲が良いから

渋谷慶一郎さんが手がけているから。

8, なぜなら、フィクションの中にも現実味があるから

SPEC自体には全くリアリティはありません。SPECなんて現代にはありません。しかし、作品のテイストは妙に人間臭くて、もしかしたら僕もSPECを持っているのでは・・・と、小学生くらいの子が見たら思ってしまうくらいの世界観に仕上がっている。また、これから何年後かにはこんな能力が芽生えるのでは?と思っている人も多分ほんの数%はいるはず(?)。

9, なぜなら、大きなテーマがあるから

SPECは、前半がミステリータッチで、後半からSPECホルダーと主人公たちの対立、スペックホルダーと人間との対立が描かれる。映画で出てくるであろう「シンプルプラン」というスペックホルダー殲滅計画というのにも見える大きなテーマ。

10, なぜなら、伏線の張り方がうまいから

謎がだんだんと明かされていく感じ。実は城田優がドラマ版の黒幕だったという展開。映画に複数残る謎。にしても、ドラマ版と映画版の間に放映された「SPEC 翔」での謎の明かされ方は半端無かったですな。

11, なぜなら、食べ物が特徴的だから

この作品にはなくてはならないニンニクたっぷりな餃子、餃子鍋、マヨネーズがかかったメロン、当麻が飲むハチミツ、さっぱりおろし天つゆネギだこ、流し餃子、柿ピー、駄菓子の烏賊のやつ…..

12, なぜなら、習字の字を中塚翠涛先生が担当しているから

中居正広のミになる図書館という番組で、芸能人の美文字鑑定をしてますね。

13, なぜなら、特殊能力が映像的に見劣りしないから

色々な能力が出てきましたが、それに映像が負けてないのが凄いなと思います。ニノマエの時間を止めて銃弾を跳ね返す能力も、当麻の死者を呼び戻す能力もビジュアルがしっかりしてますよね。まぁ、そんなに特殊なビジュアルが必要な能力が出てないというのもあるんですが。映画の伊藤淳史の能力に出てきたタコは、ちょっとなぁと思いましたが。

14, なぜなら、グロいところがはっきりとグロいから

意外と血が出ますよね。

15, なぜなら、謎だから

そもそも設定自体が未詳という謎で、SPECという力の謎。志村がブブゼラ軍団に殺された謎。いとも簡単に津田助広が死んだ謎。地居が津田助広だったという謎。白い男の謎。瀬文が能力を持っているかもしれないという謎。映画化したらその謎が神話に沿ってますます謎を呼び、そしてオカルトチックにもなり….。

マン・オブ・スティールに感じる親子愛と宿命。

念願だった、MAN OF STEELを観ました。(ネタバレあります、最小限にしますが)

スーパーマン。言わずと知れたアメコミスーパーヒーローものを、インセプション、バッドマンダークナイトシリーズのクリストファー・ノーランと、300(スリー・ハンドレット)のザック・スナイダーがタッグを組んでリメイクした作品。従来のイメージとは違った、”人間味溢れる英雄”として描かれているところがポイントです。

ちょっと、この作品はPVのクオリティが高すぎて、期待値MAXで観てしまったから、その分思うことも多かったような。

とりあえず、凄かったのが、

①圧倒的な映像美
②音楽の良さ
③迫力あるアクションシーン
④主役の筋肉
⑤親子の愛

と言ったところ。①と③に関しては、流石はザック・スナイダー。本当に凄いです。どうしたらこんな映像が作れるんだろうといった感じ。アクションシーンの迫力に関しては、これまでで一番じゃないかなぁとも思った。

④に関しては、もう逞しい体つきには文句のつけようがない。毎日5000キロのカロリーを摂取して、トレーニングをするだけのことはあると思う。

⑤に関して、この映画のキーが強靭な力を持った主人公は、孤独を味わい苦悩するも、その数奇な運命を背負って生きていくことを決意し、やがて”スーパーマン”として正義の為に奮闘していく逞しさに対して、主人公のそういった素晴らしい精神を作り出すのに、とても重要なのが親の愛情と理解であって、(もう少し深く描いていいのにと思ったけども)そこは凄く伝わってきた。(育ての親は死ななくて良かったとも思うけど)

あとは、少し残念だと思った点がちらほら。

①戦闘がめちゃくちゃで、アクションがくどい。とにかく物を壊すわ、てんやわんやで、ゴジラとかそういう系統の怪獣映画っぽくも感じたし、一緒に観た友人が言っていた「ドラゴンボールの実写?」という言葉にもああ確かに。と思ってしまう。ハリウッドが本気でドラゴンボールを作ったらあんな作品になるのか!といったような。無理矢理ビルを壊すように演出しているのが見えてしまって、そこに対する違和感は拭えなかった。いきなりゾッド将軍が赤い光線出せるようになったのかと、将軍の最期も少し呆気ない。

②回想シーンがちょっとややこしい。いや、クリスファー・ノーラン、センス良いんだけど、今回はちょっと入れ過ぎたのか、ちょっとせわしかったな。幼少期から順々にやったらどれだけ時間かかったんだろうとも思うから、回想にするのは正解なんだけども。

③話が単純。これは、スーパーマンという話を知らないからなのかもしれないし、スーパーマンのストーリーを頭に入れて観ていればこんなことを感じないのかもしれないけれど、なんだか色々と都合がいい。ブラックホールに飛ばすとか、太陽の光によってすくすくと成長したから、その分強くなったとか。ワールドエンジンとか何事?的な。心情的な面においても、主人公が特殊な能力を持ったことによる孤立や葛藤と、親からの深い愛情と理解だけでは、ちょっと足りない感がした。なぜかバットマンと比べてしまうのだけど、もっと心理描写において多くの要素が詰まっていたように思う。そして、多分リアリティの無さからの違和感が大きいんだと思う。吹っ飛びまくる敵。これでもかと言うくらい壊れていく建物。超人的な能力。

といった感じ。まぁでもクリプトン星滅亡前のことは、映像美とともに、とても丁寧に描かれていて良かった。

ちなみに、主役のヘンリー・カヴィルの俳優人生はかなり波瀾万丈で、「007」シリーズのボンド役の最終選考まで残ったものの、若すぎるという理由で、ダニエル・クレイグにその座を奪われ、「トワイライト」シリーズでは年齢が高すぎる為、エドワード役はロバート・パティンスンに渡ったとのこと。今回の役が決まった時、家の階段を15分間、叫びながら上り下りして興奮したらしいです。

続編があるようだけど、どうやってバットマンを出すんだろうか。スーパーマンがもう強すぎるから他にヒーローはいらないんじゃないかと思う。友人が言っていた「記者としてバットマンの元に取材しにいく」というのは、あながち間違いじゃない気がする。

にしても、あの青×赤のどう見てもダサいスーツを、良くここまで格好良く映すことが出来るなぁ。と感心しました。

水谷豊の怪演にしびれる「少年H」。

少年Hを見ました。

テレビ朝日開局55周年記念作品ということで、スマステーションに水谷豊と伊藤蘭が出演するなど、宣伝にも力が入った作品。

8月に入って劇場で見るのは、風立ちぬ、モンスターズ・ユニバーシティに次いで三本目。

評価の高い作品しか見てないからなのかもしれないけれど、とても良かったです。

相棒シリーズを見てない自分にとって、水谷豊の演技がどんなものか知らずに見ることになったけども、これまた素晴らしい。

また、キャストの中では、主人公Hが通う小学校の先生役を演じた安田大サーカスの団長、軍事学校の長官役を演じた原田泰造はものすごくはまり役。

そして、ほんの少しの出演だったにも関わらず、これほど印象に残る濱田岳はやはり天才だと思います。

最近戦争をテーマにした作品を、比較的良く見るのですが、この作品は、戦争に勝った負けたではなくて、戦争がいかに無駄なことか。どれ程多くの命が犠牲となり、また、どれ程国民を支配し生き辛い世の中にしていったのかに対して、当時の国民に対して、先祖に対して悔やまれる思いを抱きます。

それでも主人公の父をはじめとする主人公の家族は、戦争下をとても逞しく生き抜きます。

劇中で、戦争が終わり、戦前に大日本帝国万歳と散々言っていた人々が、戦後には打って変わって民主主義を提唱し、軍人ではなく元々の職業で生きていくという変わり果てた日本の中で、自らに迷った結果、水谷豊演ずる主人公の父親が、”クヨクヨするのはもうやめにしよう”と主人公Hに告げるシーン。

きっとこの作品で一番言いたいことは、”新しい一歩を踏み出そう”ということなんじゃないかと思います。

そのことが、戦争というバックグラウンドの中、愛に満ちた素晴らしい家族に焦点を当てることで、十分過ぎる程に表現されており、とても感動しました。

クスッと笑える場面もあり、家族愛の温かさに感動する場面もあり、全体的なバランスが良く、演技も素晴らしい。
とても見る価値のある作品だと思うので、自分が足を運んだ劇場でも年配の方の客層多い気がしましたが、この国で、今から50年ほど前に何があって、人々の思想に自由がなく、メディアも麻痺している国であったこと等を、ぜひ幅広い世代に知ってほしいと思います。

やはり、家族愛を描いた作品は良いですね。すごく好きな作品の一つになりました。