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マン・オブ・スティールに感じる親子愛と宿命。

念願だった、MAN OF STEELを観ました。(ネタバレあります、最小限にしますが)

スーパーマン。言わずと知れたアメコミスーパーヒーローものを、インセプション、バッドマンダークナイトシリーズのクリストファー・ノーランと、300(スリー・ハンドレット)のザック・スナイダーがタッグを組んでリメイクした作品。従来のイメージとは違った、”人間味溢れる英雄”として描かれているところがポイントです。

ちょっと、この作品はPVのクオリティが高すぎて、期待値MAXで観てしまったから、その分思うことも多かったような。

とりあえず、凄かったのが、

①圧倒的な映像美
②音楽の良さ
③迫力あるアクションシーン
④主役の筋肉
⑤親子の愛

と言ったところ。①と③に関しては、流石はザック・スナイダー。本当に凄いです。どうしたらこんな映像が作れるんだろうといった感じ。アクションシーンの迫力に関しては、これまでで一番じゃないかなぁとも思った。

④に関しては、もう逞しい体つきには文句のつけようがない。毎日5000キロのカロリーを摂取して、トレーニングをするだけのことはあると思う。

⑤に関して、この映画のキーが強靭な力を持った主人公は、孤独を味わい苦悩するも、その数奇な運命を背負って生きていくことを決意し、やがて”スーパーマン”として正義の為に奮闘していく逞しさに対して、主人公のそういった素晴らしい精神を作り出すのに、とても重要なのが親の愛情と理解であって、(もう少し深く描いていいのにと思ったけども)そこは凄く伝わってきた。(育ての親は死ななくて良かったとも思うけど)

あとは、少し残念だと思った点がちらほら。

①戦闘がめちゃくちゃで、アクションがくどい。とにかく物を壊すわ、てんやわんやで、ゴジラとかそういう系統の怪獣映画っぽくも感じたし、一緒に観た友人が言っていた「ドラゴンボールの実写?」という言葉にもああ確かに。と思ってしまう。ハリウッドが本気でドラゴンボールを作ったらあんな作品になるのか!といったような。無理矢理ビルを壊すように演出しているのが見えてしまって、そこに対する違和感は拭えなかった。いきなりゾッド将軍が赤い光線出せるようになったのかと、将軍の最期も少し呆気ない。

②回想シーンがちょっとややこしい。いや、クリスファー・ノーラン、センス良いんだけど、今回はちょっと入れ過ぎたのか、ちょっとせわしかったな。幼少期から順々にやったらどれだけ時間かかったんだろうとも思うから、回想にするのは正解なんだけども。

③話が単純。これは、スーパーマンという話を知らないからなのかもしれないし、スーパーマンのストーリーを頭に入れて観ていればこんなことを感じないのかもしれないけれど、なんだか色々と都合がいい。ブラックホールに飛ばすとか、太陽の光によってすくすくと成長したから、その分強くなったとか。ワールドエンジンとか何事?的な。心情的な面においても、主人公が特殊な能力を持ったことによる孤立や葛藤と、親からの深い愛情と理解だけでは、ちょっと足りない感がした。なぜかバットマンと比べてしまうのだけど、もっと心理描写において多くの要素が詰まっていたように思う。そして、多分リアリティの無さからの違和感が大きいんだと思う。吹っ飛びまくる敵。これでもかと言うくらい壊れていく建物。超人的な能力。

といった感じ。まぁでもクリプトン星滅亡前のことは、映像美とともに、とても丁寧に描かれていて良かった。

ちなみに、主役のヘンリー・カヴィルの俳優人生はかなり波瀾万丈で、「007」シリーズのボンド役の最終選考まで残ったものの、若すぎるという理由で、ダニエル・クレイグにその座を奪われ、「トワイライト」シリーズでは年齢が高すぎる為、エドワード役はロバート・パティンスンに渡ったとのこと。今回の役が決まった時、家の階段を15分間、叫びながら上り下りして興奮したらしいです。

続編があるようだけど、どうやってバットマンを出すんだろうか。スーパーマンがもう強すぎるから他にヒーローはいらないんじゃないかと思う。友人が言っていた「記者としてバットマンの元に取材しにいく」というのは、あながち間違いじゃない気がする。

にしても、あの青×赤のどう見てもダサいスーツを、良くここまで格好良く映すことが出来るなぁ。と感心しました。

水谷豊の怪演にしびれる「少年H」。

少年Hを見ました。

テレビ朝日開局55周年記念作品ということで、スマステーションに水谷豊と伊藤蘭が出演するなど、宣伝にも力が入った作品。

8月に入って劇場で見るのは、風立ちぬ、モンスターズ・ユニバーシティに次いで三本目。

評価の高い作品しか見てないからなのかもしれないけれど、とても良かったです。

相棒シリーズを見てない自分にとって、水谷豊の演技がどんなものか知らずに見ることになったけども、これまた素晴らしい。

また、キャストの中では、主人公Hが通う小学校の先生役を演じた安田大サーカスの団長、軍事学校の長官役を演じた原田泰造はものすごくはまり役。

そして、ほんの少しの出演だったにも関わらず、これほど印象に残る濱田岳はやはり天才だと思います。

最近戦争をテーマにした作品を、比較的良く見るのですが、この作品は、戦争に勝った負けたではなくて、戦争がいかに無駄なことか。どれ程多くの命が犠牲となり、また、どれ程国民を支配し生き辛い世の中にしていったのかに対して、当時の国民に対して、先祖に対して悔やまれる思いを抱きます。

それでも主人公の父をはじめとする主人公の家族は、戦争下をとても逞しく生き抜きます。

劇中で、戦争が終わり、戦前に大日本帝国万歳と散々言っていた人々が、戦後には打って変わって民主主義を提唱し、軍人ではなく元々の職業で生きていくという変わり果てた日本の中で、自らに迷った結果、水谷豊演ずる主人公の父親が、”クヨクヨするのはもうやめにしよう”と主人公Hに告げるシーン。

きっとこの作品で一番言いたいことは、”新しい一歩を踏み出そう”ということなんじゃないかと思います。

そのことが、戦争というバックグラウンドの中、愛に満ちた素晴らしい家族に焦点を当てることで、十分過ぎる程に表現されており、とても感動しました。

クスッと笑える場面もあり、家族愛の温かさに感動する場面もあり、全体的なバランスが良く、演技も素晴らしい。
とても見る価値のある作品だと思うので、自分が足を運んだ劇場でも年配の方の客層多い気がしましたが、この国で、今から50年ほど前に何があって、人々の思想に自由がなく、メディアも麻痺している国であったこと等を、ぜひ幅広い世代に知ってほしいと思います。

やはり、家族愛を描いた作品は良いですね。すごく好きな作品の一つになりました。

エディ・レッドメインの演技がすごすぎる「博士と彼女のセオリー」

観てきました。内容は以下参照。

天才物理学者として将来を期待されるスティーヴン・ホーキング(エディ・レッドメイン)はケンブリッジ大学大学院に在籍中、詩について勉強していたジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)と出会い恋に落ちる。その直後、彼はALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症し余命は2年だと言われてしまう。それでもスティーヴンと共に困難を乗り越え、彼を支えることを選んだジェーンは、二人で力を合わせて難病に立ち向かっていく。

流石はノミネート作品。って感じでした。ホーキング博士を演じたエディ・レッドメインの演技がすごすぎる。

主人公が難病に侵される場合、大抵が演じる側の気迫というか、”頑張って難病を演じきってやるぞ感”が出てしまうものですが、そういったわざとらしさが全く感じられない。本当にリアルすぎて、レッドメインが本当にALSなんじゃないか、と思いました。(いやまじで)

何ヶ月間もかけて準備したと言っていましたが、その努力をこんなに自然に表現できるとは。ものすごい役者なんだなと改めて再認識しましたね。

妻ジェーンを演じたフェシリティ・ジョーンズも素晴らしかった。

博士の症状が進行するにつれ、段々と鬱になっていく様子はすごく伝わってきました。博士と恋に落ちるシーンと衰弱しきった彼を介護するシーンを比較すると表情の違いが面白いです。(特に口元)

ただ、演技だけでなく、ただただストーリーもよかった。二人の関係は最後まで思いやりに溢れていましたね。(詳しくは書きませんので、観てください)

妻ジェーンの伝記をもとに脚本化したみたいですが、ALSの夫を支え、子育てをする妻の苦労が、ただの美談で済むわけはなく。愛して悩んで、葛藤して奮起して、時に心が折れかけて、、、。劇中でもよく表現されていたと思いますが、おそらく現実はもっと壮絶だったに違いないでしょう。

また、服装が素敵でした。60年から80年代の英国服飾ということで。舞踏会のシーンでは、色使いが夏っぽい淡いパステル調の服装が芝生と夜空とパーティの灯りにすごく映えていて華やかでした。淡い水色ドレス姿のフェリシティがこれまた美人だこと。

Production Notesにはこんなことが書いてあったので、注目するとより楽しめるかもしれませんね。(下記)

「ジェーンは1970年代に最悪の状態を経験してちょっと鬱状態になる。だからその時の色遣いは、よりくすんだものにした。ジョナサンと出会った後はそんな状態から脱して、少しばかり派手な服を着るようになる」

ちなみに主演のレッドメインは、ホーキングを演じるに渡り77着もの服を着替えていたらしいです。すごいですね。

However bad life may seem, where there is life, there is hope. – Stephen Hawking

映画権を妻のジェーンから得るまでに8年、完成するまでは10年かかったそうですが、偉人ものは当人が亡くなってからの映画化が多い中、OKサインを出したホーキング博士に感服です。