「ドンキはみんなが好き勝手に働いたら2兆円企業になりました」を読んだ。

ドンキの社長ならびに、リブランディングに携わった博報堂のクリエイティブディレクターが共著で書かれた一冊。

奇しくも現職の方が関わっていたり、職場内でもかなり評価の高い取り組みとして認識していたため、気になって読んでみました。

結論、ああこういう仕事がしたくて今の会社に入ったんだよなぁ…と感慨深くなったりもしましたが、気になった箇所をメモとして残しておきます。

 ちなみに、ドンキでは売り場のことを「買い場」と呼びますが、これもお客さまを主語にすれば売り場は「買う場所」だからなんです。
 万が一、格好いい店をつくってしまったら、それはドンキではなくなってしまいます。安田会長がイメージしているドンキは、格好いい店とは対極にあるのです。入社したての頃は、本当にそれがわかりませんでした。

売り場ではなく、買い場。

全く意識したことなかったけど、確かに!となりました。

 実は1商品の平均販売価格は400円に届きません。ドンキは小さな商品を売る、文字通り「小売り」です。400円弱の商品の販売を毎日各店舗でコツコツ積み上げていって、1年間で2兆円になったのです。2兆円を400円で割ると、単純計算で50億個以上、商品を売らなければなりません。
 僕が自分の会社に誇りを持っているのは、まさにこの点です。店舗の最前線で働いている社員やアルバイトのみんなが知恵を絞って魅力的な商品を仕入れ、思わず買いたくなる買い場をつくっていることの証しなのです。

小売りの真骨頂はドンキなのである、と説明する材料として覚えておきたい。メモ。

 僕が「ロゴを変えるからデザインしてください、といった話ではなく、PBをブランドとして確立させたいんです」と用件を伝えると、「やります!」と即答でした。博報堂の営業担当が「チームを決めます」と言うので、僕は次のようにハッキリ伝えました。
 「何をやるかも大切だけど、誰とやるかがもっと重要だから、メンバーがダメだったら博報堂には頼みません。自分たちには知見がないから外部に頼むんですよ。僕らが言ったことに何でも『イエス』と答えるような人は、絶対連れて来ないでください」

 私にとって、忘れられない吉田社長の言葉があります。ある会議で私がプレゼンすることになっていたのですが、それに向けて、こう言われました。
 「ゼロか100だけ持ってきてください」
 最初から中間の50を持ってこられても、それが本当に基準になるかどうかわからないというのです。極端にとがったものと全然ダメなものだと、ゼロと100だから、足して2で割ると50になって、初めて基準ができる、とのことでした。
 いきなり中庸を狙ったところで、全くとがらない。最初に飛び抜けた書き方を提示してから、ルールに基づいて落としどころを探していくと、良い言葉になっていくのです。
 例えば、商品起案会議のスタートでは、その商品にGOサインを出すかどうかを投票します。この投票の基準は「本当にこれでお客さまを驚かせられるのか?」。売れるか売れないかも大事ですが、重要指標は「驚きがあるの?ないの?」です。最初から中庸を狙っていっても、まず会議では評価されません。
 実際、過去にメーカーの真似事のような、格好をつけただけのPB商品を作ったのですが、ことごとく売れませんでした。
 ドンキの発想はそれだけ起点の段階で、既にとんがっているということです。

上記2つは、自分もこのスタンスで仕事しなくちゃな、と改めて感じた一節。二節?

 そもそもドンキには「CV+D+A」というコンセプトがあります。
 「CV」はコンビニエンス、便利さのことです。日用品から食品、家電、高級ブランドまで、豊富な品揃えに加えて、多様な立地での店舗展開や長時間営業によって便利さを提供しています。
 「D」はディスカウント、安さです。商圏内の他店に対し、競争優位性が高い価格設定によって「驚きの価格」を実現していきます。
 「A」はアミューズメント、面白さです。圧倒的陳列や手描きPOPなどによる五感を刺激する空間演出で、買い物の楽しさを提供しています。

これは、現職で関わるクライアントに対して話せるネタとして覚えておきたい。メモ。

シンプルで現場にも浸透しやすいだろうし、社内外の誰が聞いても”This is ドンキ”と思える特徴まで昇華できているのは、まさに企業努力の賜物。

 ブランドの一番大事な要素は視認性です。視認性を突き詰めると、物事をどう整理するかということです。商品を店頭に並べたとき、商品のロゴの位置を含めて見え方を整理するのが極めて重要です。
 そんな意識がありましたから、情熱価格リニューアルの最初の段階では、ドンキらしさを踏まえながらも、ブランドとして成立させるため視認性を高めるような、整理されたデザインにしました。結果的に、それが格好つけているように見えてしまったのでしょう。
 つまり、「整理し過ぎた」ということです。
 そもそもドンキの良い点は、格好つけないこと。実際には買い場はよく練られて作られていますが、パッと見は整理されていません。圧縮陳列でガチャガチャ散らかっているようにさえ見えます。その良さを、デザインによってどう表現するかを議論していきました。
 視認性が大事だといっても、ブランドは見た目だけで決まるわけではありません。ドンキの店舗の人たちが「あ、ドンキっぽいじゃん!」と乗ってきやすく、なおかつお客さまから応援されるような見せ方を模索しました。

格好つけない、整理し過ぎないこと自体がブランドになるのってドンキ以外ないよな、と改めてその凄みを感じました。

 一般的な他社のPBでは、万人ウケしたほうがいいという考え方になると思います。そのほうがマーケットは広くなり、売上が伸びる可能性が高いからです。
 しかし、ドンキは万人ウケしないPBをさらに先鋭化させました。2023年11月にリリースした「偏愛めし」です。
 「みんなの75点より誰かの120点」
 これが偏愛めしのコンセプトです。万人ウケは狙わないと明確に決めた、総菜のみのブランドです。好きな人だけ救になってくれればいいと、思う存分、振り切りました。
 天津飯を創造してください。天津飯を食べるとき、最後の方になると、あんがなくなって、白ご飯だけが残ってしまうことはありませんか? これが天津飯を食べるときのストレスになっている人がいるのではないか….。会議の席で、そんなことが話題に上ったのが開発の出発点でした。
 そこで「僕は具が足りなくて、白飯ばかりになるのが一番嫌い」という、少し偏った思考の人に向けた天津飯を開発することにしました。その名も「あんだく溺れ天津飯」。あんが通常の3倍くらい入っている天津飯です。白ご飯はもちろん、玉子も”あんの海”に完全に溺れています。

いくつか新規事業開発・新サービス開発を経験してきたものの、「具体的かつ身近な誰かにとんでもなく深く刺さる」アイデアを考えるというセオリーを、ドンキの規模感で実現できるのは、もはや羨ましい。

上に話せば話すほど尖りが失われていくプロセスがない環境で働くのは心底楽しいだろうな。

もはや異質すぎて、転職とかできなくなりそうだけど。(独立するのかな)

…それが「マジ価格」です。いわば「逆ダイナミックプライシング」です。人気の高い商品の中から、お客さまの声が多い上位品を1ヵ月限定で値下げします。
 ダイナミックプライシングといえば、航空チケット代金やホテルの宿泊代金などで一般的になってきています。経済学の教科書には、需要と供給の量が一致する価格を均衡価格というと書いてありますが、ダイナミックプライシングは、需要と供給の関係に忠実に価格を決定するということですね。ダイナミックプライシングでなくても、供給に対して需要が大きい人気商品(あるいは繁忙期)になれば、モノの価格は上がるというのが常識ですね。
 ところがマジ価格は、そういった価格理論(その最たるものがダイナミックプライシングで、採用している企業は球速に増えているとみています)とは逆行して、あえて需要が大きい、人気の高い商品の価格を下げてしまうんです。つまり、ドンキのマジ価格は、経済学の常識にとらわれず、そして昨今のトレンドとは逆を行く試みなんです。
 なぜ、経済理論の逆を行くような、一見むちゃくちゃなとも言えることをするのでしょうか? それは、ドンキらしいというか、僕たちのコンセプトである「驚き」に忠実というか。経済理論とは違うけれど、僕たちにとっては、より良い打ち手だと思っているからです。
 「大人気なので、値下げしました」
 こんな人を食ったような話、とてもヘンですよね。だけど、ドンキの社内では、ものすごいスピードで、この考えは営業全体の共感を得られました。

これも上記と同様に、素晴らしすぎるなと。

事例として話せるように引き出しに入れておきたいので、メモ。

 10年以上前のことですが、部下だったある部署の信任部長に、事細かく指示をしてから数日後のこと。安田会長から、その指示についてお叱りの電話がかかってきました。部長に指導したことの何が悪いのかなあと思いつつ、「会長、僕はちゃんと指示していますよ」と言い返しました。すると「権限移譲の定義とは?」と、思わぬ質問が安田会長からきました。
 うなりながら僕なりに説明しましたが、ことごとく「違うよ」と否定されました。しばらく問答が続いた後、安田会長から「権限移譲とは、プロセスコントロールをしないこと、以上!」という「正解」が僕に告げられ、電話での会話は終わりました。

権限移譲とは、プロセスを任せきること。これは至言だなと思いました。

とはいえ、ほったらかしにしたら失敗を招くし、下の人間はしんどい。その分、「狭く深く」任せることがとにかく重要。

過去在籍したスタートアップでの失敗経験がありありと蘇りました。

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