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「戦略質問」を読んだ

かなり良書。特に自分のようにコンサル未経験でコンサルムーブをしなければならない方など。

下記、特に覚えておきたいなと思う部分をメモ程度に残しておきます。

 昨今、個人的にすごく懸念していることが、戦略立案作業の過度な「工業化」である。この場合の工業化とは、戦略の立案に必要な作業が細かく分けられており、決められた手順通りやっていくと、戦略が立案できているようにするというものである。いわゆる方法論化である。


書籍やらネットやらで方法論が自由に述べられ、戦略の作り方がどんどんコモディティ化しているけれど、こうした手順は「何かを構築する」場合には適しているものの、「何かを発想する」には活かせない。

結果として、競争に勝つための発想よりも、社内の意見のとりまとめに近しいことになっていく。

また、サクッとネットで調べれば他社の動向が概ね把握できる分、戦略がどんどんと似通っていく中でどう差別化するか?がキモなのだけど、なんとなくとりまとめて、なんとなくやった感に陥らないよう・楽しないように留意したい。

 欧米では、戦略の実行方法を議論するようなときに、「WIIFM(ウィーフム)」という言葉がよくつかわれる。これはWhat’s in it for me? という分のそれぞれの単語の頭文字をとったものである。日本語でいえば「いったい自分にとって、それがなんの恩恵をもたらすの?」という感じである。
 戦略を現場に浸透させる場合に、個人個人の「WIIFM」を説明できることが重要だ。そのために、戦略そのものにそれを組み込んでおかなければならない。


これは知らない言葉だったので、メモ。

 「ゲームプラン」という言葉がある。ラグビーの試合で、監督が選手をグラウンドに送り出す際、「勝敗の責任は監督である私にある(選手の君たちに勝敗の責任はない)。君たちの責任は、ゲームプランをそのとおりに遂行することにある」ということがある。これからプレーする選手たちが、「君たちに勝敗の責任はない」といわれるのは、読者の皆さまは「どうして?」と戸惑われるかもしれない。これはこういうことである。
 ゲームプランは、相手にこうやって勝つという道筋をまとめたものだ。各プレイヤーが、ゲームプラン遂行のための自分の役割をきちんと果たしてくれさえすれば、論理的には100%勝てるというものである。
 だから「机上」では100%勝てるプランをつくる。それを選手たちに理解させ、実際の試合でもそのとおりできるようにするために練習をする。試合前に監督が選手を送り出すときにいう言葉は「ゲームプラン通りやってくれればいい。(もしゲームプラン通りやって)負ければそれは自分(監督)の責任」というものである。
 つまり、戦略の責任は監督、戦略通りやったかの責任は選手、という考え方になる。その試合に負けたとすれば、敗因は、ゲームプランが間違っていたのか、それともゲームプラン通りにできなかったからなのかを考える。
 「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」というように、ゲームプランという基準(仮説)があったからこそ、負けた場合の理由がわかり、それが知見としてチームのものになる。このあたり、スポーツとビジネス、共通点は多いと思う。
 戦略(ゲームプラン)が机上で100%勝てないとすれば、それを実行すれば、勝利は偶然頼みになってしまう。


戦略を揶揄するのには、机上の空論という言葉が用いられるけど、机上で100%近く勝てるという状態を土台にしたのち、それを正しく実行する。実行の最中に起こりうる予想外のことに対応しながら進めるというのが正しいプロセスなんだよな、と改めて自戒を込めて。

「戦略なんて作らなければよかった」「どうせ100%実行できなかったのだから、戦略なんて中途半端でもいい」とは決してならない。

 余談だが、かつて、筆者はIBMとは競合となっていたPxCコンサルティングに属していた。ところが、突如、そのIBMから買収を受けた。その際、両者でのビジョン策定のミーティングを目の当たりにした。そのとき日本のPwCコンサルティングの代表だった倉重英樹氏は、当時のグローバルサービス部門のトップ(のちのIBMの社長)に、「ビジョンではなく、我々にとってのこの統合の野心(アンビション)をまず語ろう」と提案した。ビジョンというとどこかおとなしい感じがする。野心となると、何かを成し遂げてみせようとの思いがそこに入る。米国人のそのトップはそれを快諾し、議論が進められた。
 その議論をもとにアンビションが整理された。おそらくあのとき、ビジョンからいきなり議論を始めたら、もともと相互に敵対意識をもっている組織同士、それも両社まったくカルチャーが違うので、結論のつかない空中戦になっただろう。
 「我々の野心はなんだろうか」と尋ねられたために、「IBM対PwC」が「『IBM+PwC』対『競合』」という図式になったのかなと思われる。さらには「IBM+PwC陣営と社会」という形で議論すれば、それがビジョンにつながったであろう。
 ついでに、この「あるべき姿」で私の好きな話がある。内田洋行にチェンジワーキングというワークスタイル改革のサービスがある。そのサービスを開発したリーダーの平山信彦氏とその一門は、あるべき姿ではなく「ありたき姿」という言葉をあえて使っている。「あるべき姿」と「ありたき姿」は違うか。あるべき姿というとどこか冷静な自問自答に聞こえる。一方、ありたき姿というと、「そうなりたい」という意志やパッションが感じられる。言霊というが、言葉の選び方というのは大事だと思う。


会社のことだけではなく、その人個人の人生をあえて尋ねてみるつもりで、経営トップの個人的な野心を聞くのも重要とのこと。確かに、同じことをしているパイセンが昔いたなと思いだしました。

会社の代表としての「公の自分」から降りて、どこに楽しみがあるのか聞いてみることは、あるべき姿を考える際のヒントになったりするだろうな。

ウォールーム(短期集中型の戦略立案MTG)を実施する際の4つのアングル

  • ズームアウト(Zoom Out):いつも考えているよりもずっと長いスパンで物事を考え直す
  • チェンジアングル(Change Angle):その会社でのタブーを、あえて打破して考えてみる。典型的なのは、ビジョンや経営理念の見直しであり、従来から当たり前とされてきたことについて、今の時代感を考慮してその継続可否や過不足の検討を行うことが多い
  • ディープダイブ(Deep Dive):グローバリゼーション、DX等々、重要性が極めて高いが、緊急性が低いために「いつかぜったいにやらねばならないと思ったまま放置されていること(本当に考えると膨大な工数や調整が必要)」について、グランドデザイン(概要)を短時間でさっさと描き切ってしまおうというもの。全く未知の領域(答えがないために、合議では解決しない問題)への対応もこれにあたる
  • インサイドアウト(Inside Out):経営者の頭もしくは心の中にある暗黙の野心やアイディアを引き出し、その言語化を図るものである。経営者の参加の部門リーダーが何をやりたいのかを整理するときなどにも活用される

  • どこかで使ってみたいと思って、とりあえずメモ。

     話は横道にそれるが、本書を書くきっかけは、私のかつてのボスであり恩師の影響であることは先に述べた。
     その人のところに何かの報告に行くと、いつもすんなりとは終わらない。いや始まらない。たとえば、筆者が「●●の件、報告に伺いました。ええとですね」と始めようとすると、まず「待て」といわれる。そして次に出るのが「その、これからしたいという報告だけど、何をもって報告が成功したと考えたかね」と質問される。最初はまったく意味不明だった。「だって報告に来ただけなんだから、『何をもって成功したか』と禅問答みたいなことをいわれても困るなあ」と思っていると、さらに「君にとって、よい報告と悪い報告って区別はある?」と聞かれる。勢いで「はい」と答えると、「じゃあ、それを考えてから報告してよ」となった。
     もちろん緊急案件であるなら、そんな禅問答じみたことにはならないが、本件は特に緊急案件ではなかった。まあ、今から考えると、深く考えない私への教育指導だったんだなあと思う。
     よく考えた末にカムバックした。「報告内容は3件あって、そのうち2件は、今度、社長が●●社に行くときに、この情報を知っていればその商談で有利に進められるというものです。そして1件は、僭越ながら社長が勘違いをされているのではないかということがあり、私の見解をぶつけてご意見を聞こうと思いました」というようなことを答えた。すると社長から「ふたつは私にこう動いてほしいということだね。それを私が勘違いをしているかもしれなくて、それにしたがっていると自分の仕事が困るということか。なるほど」とまとめが入った。私も「なるほどなあ、だから報告に行く必要があったわけだ」と本末転倒的なことを思った。
     それ以来、私は「何をもって病」にかかってしまった。だから、顧客の戦略立案をお手伝いするときも、「何をもって市場の分析が終わったといえるのか」「何をもって次回のステコミが大成功に終わったといえるのか」と考えるようになった。


    「何をもって成功か」を定義せずにMTGが進み、各々「とるべきアクション」をランダムに言い合うことは往々にして起こりえるなと。めちゃんこ刺さった。

    一見、馬鹿げたアイディアだと感じるものでない限り、それはアイディアではない – アインシュタイン


    知らない言葉だった。すばらしい。

     コンサルタント時代のスタッフたちと話をすると、「最近は戦略策定の仕事ばかりですよ。『チューケイ』ばかりつくってます」という話をよく聞く。チューケイとは中計。いわずもがな「中期経営計画」である。それなりの大企業を顧客にした、いわゆる経営計画策定のファシリテーション的な仕事なのかなと想像がつく。
     ただその話にはちょっとだけ違和感が残る。それは、彼らが「中計をまとめると、それがすなわち戦略をつくったことだと思っていないか」ということである。
     経営戦略と経営計画は、いろいろな局面で混同されがちである。たしかに、資料になった場合には、両方が別々というのはあまりなくて、経営戦略に重きを置き、その中に計画が入っていたり、経営計画に重きを置き、その背景として戦略を語っていた李と形態はいろいろある。
     戦略は、選択と集中を着眼点に、その企業の「勝ち方」あるいは「勝ち残り方」を考えるものである。一方で、計画は、戦略で決められたスキームに基づき、どの経営資源をどのような時間軸で割り当てていくのか、そして、その結果どのような時間軸で、どのような業績インパクトがもたらされるのかを整理するものといえる。つまり、論理的に戦略と計画は別物であり、資料の中での同居はあるが、検討は別というのが理想だと思う。
     そう考えると、戦略がないのに計画ができるはずない。と、いいたいところだが、そう単純にはいかない。というのは、投資家というステークホルダーが存在するためである。彼らが1にも2にも求めるものはコミットメントである。投資先の経営者はどのような業績をコミットしているのか。まずはそこである。したがって投資家の要求を満たすべく、現状とのギャップを埋めるための戦略をつくれ、ということになる。
     彼らからすれば、もちろんジャイキリは大歓迎。ただし、そこにすぐに数字がついてくればの話である。自らの資産を投資している彼らとしても、膨大な外部情報を収集し、今後の機会と脅威、さらには成長のポテンシャルを分析し、彼らなりの考えを、数字としてもっている。
     当然、経営計画策定の際には、彼らの期待値を、目標値として考慮する必要がある。極論からすれば、経営計画の概要は、経営戦略を策定する以前に決まってしまうということになる。経営計画のゴールと、現在のままでいた場合の見通しのギャップを分析し、それを解消するという目的で、経営戦略は検討される。これはこれで正しい道筋だと思う。が、なんだかやらされ感みたいなものを感じてワクワク感がない。
     投資家の期待を最初は一切考えずに、既存の経営計画策定サイクルの外で、自由に戦略を描いてみる。そんな機会でもなければ、ジャイキリは難しいのではないかと思う。


    これは現職でのコンサル経験よりも、スタートアップで投資家対応をしていた時のモヤモヤが浮き彫りに似合って、深く頷きました。

    投資家の圧がある環境は有難い反面、ちょっと投資家の顔色を窺いすぎたな…と思う経験もしたな。言い合える関係値ではなかった。

    あるとき筆者は、上司から「ポーターのFive Forces Modelを知っているか」と尋ねられた。勢いよく「はい(なんでも聞いてください)」と答えると、彼は「あのモデルのメッセージは何だと思うか?」と言う。
     すかさず筆者は、「競合との競争だけが競争ではなくて、そのほかに4つの競争があるということです」と答えた。すると、上司が俊二に私に興味をなくしたのが感じられた。
     あとでわかったことだが、彼によると、あのポーターのモデルの一番重要なところは、「今までの競争とはまったく違う競争を仕掛けてくる奴らこそが、最高に危険な連中」ということだった。つまり、今までの競争なら怖くない。顧客や調達先が知恵をつけてきての交渉も、怖いことは怖いが、まあ大丈夫。問題は「まったく違うスキルセットで挑んでくる『新規参入者』もしくは『代替品』」だ。なぜ彼らが怖いか。それは「まったく違うスキルセット」が「今までになかった発想」で挑んでくるからだ。
     「発想や感性が武器になる」。それ以来、新しいことをやるには、新しいタイプの人材が必要だということを肝に銘じた。


    当時の筆者と同様のレベルでしか認識できていなかった。もう一度読んでみようかな。

    確かに、ジャイキリを発想するの新たなタイプの人材をリクルーティングするのは手として間違いではないけれど、本当は新しい感性を持った人材がいるのに、戦略の目線を高く持って発想する場が与えられてなかったり、途中で潰されているケースも多々あるから、初手としては人材の能力が最大発揮できる場を作るためにどうするかを考えるべき。

    スキルワーカーとナレッジワーカーの違い

  • 仕事の種類:【スキルワーカー】手順が与えられ、それを実行すると成果の実現が保証される【ナレッジワーカー】期待成果が与えられ、やり方は本人に任せられる
  • 上司の役割:【スキルワーカー】マネージャー(管理者)【ナレッジワーカー】リーダー(先導者)
  • 人の動かし方:【スキルワーカー】権限(指示と命令)【ナレッジワーカー】リーダーシップ(納得と感動)
  • 求められるもの・与えられるもの:【スキルワーカー】社内価値(パワー)【ナレッジワーカー】市場価値(自由)
  • その通りだな~。トレンド的には右側にいくはずなのは薄々感じつつ、警鐘だけを鳴らすYouTube多すぎるよな~とか思いながら、メモ。

    上司の指示が不適切だから失敗しました、というのは典型的なスキルワーカーであって、手順を与えられなかったからできませんというのはダサい。

    とはいえ、多くの企業はナレッジワーカーを求めているけど、組織のつくりやマネジメントスタイルはスキルワーカーに寄っているものなんだよな。(と、現在進行形で実感)

     日本語には「改革」と「変革」なる言葉がある。英語表現にしてみると、前者は「リエンジニアリング」、後者は「トランスフォーメーション」とでも言い換えられよう。改革(リエンジニアリング)は「やり方を抜本的に変えること」、変革(トランスフォーメーション)は「やることを変える」というように区別している。
     改革についてはすぐにイメージが湧くと思う。でも、変革のほうは、どうだろうか。一言でいえといわれれば、筆者は「業態が変わること」と表現している。
     両社の大きな違いは、新しいスキルセットの必要度合いである。改革ならば今の状態でも実行できるが、変革となれば通常は業態が変わることになるわけで、まったく新しいスキルセットが必要になる。

    過去のIBMでは、当時43万人いた社員を、9万人まで減らした一方で、必要数である14万人を新たに採用したとのこと。

    一見、43万⇒23万の莫大なリストラに見えるものの、単純に人を減らしてコストカットしたわけではなく、スキルセット自体を入れ替えた。そのことで、メインフレーム主体のメーカーからサービス事業の会社となり、その後コンサルティングの会社となり、ソフトウェアの会社となり、今はクラウドであると。

    確かにこの業態の変化は、変革といえるし、言葉通りトランスフォーメーションだね。

     ある企業の顧問が中途採用者のスペックについて語った話だ。それは「2回以上転職した人」というものだった。読者の皆さまは、この意味がおわかりになるだろうか。筆者はまったく想像ができなかった。
     その意図は、「1回だけだと、前に勤めていた会社のやり方が正しいと信じて、それをここに適用させようとする。でも、前の会社のやり方が間違っていたら大変なことになる」というものだった。だから「2回転職した人だど、世の中、やり方はいろいろあるんだなと思って、この会社に来たときに、前職のふたつのやり方のうちどちらの方が適しているのか、とか、この会社にふさわしいやり方はもっと他にあるのではないかと考えるかもしれない」というものだそうだ。筆者はそれを人づてに聞いたのだが、なんと実践的かつ現実的なアイディアなのかとびっくりした。
     この会社は、通常だと一流企業というところに入れる高学歴の人材が敬遠してしまう不人気業界にいる。だが、その業界でも、「この会社だけは違う」と、オーナーのビジョンに人が殺到してきている。入社してくる人は、「前職の仕組みのほうがきちんと整備されている」と思い込んでいる。そしてそれも事実であることが多い。だから他意はなく、前職の仕組みを持ち込もうとする。だが、そのよいと信じ切っている仕組みが、ベストプラクティスというものではなく単に前職でやっていたというだけの仕組みであった場合、現場は混乱したという。だから、2回以上転職した人である。
     その顧問の方も、かつては誰もが知る超一流の戦略コンサルティングファームにいらした方だと聞くが、インドのジュガード顔負けの発想に驚いた。


    とってもその通りだな、と思った考え方。いつか自分で起業ないしは、そういったポジションに着いたときにも覚えておきたい。

     …では、DXが目的でなく手段とすれば、本来の目的はなんなのだろう。でもそうなると、決まって急に話が抽象的になり、苦し紛れに「競争優位性の確保」みたいに古臭く、そして漠然とした話になるのではないだろうか。
     DXと聞くと、筆者はその昔PwCコンサルティング(のちにIBMが買収し統合)に所属していた頃のペーパーレス化をどうしても連想してしまう。当時のCEOの倉重英樹氏(現シグマクシス・ホールディングス代表取締役会長)は、ペーパーレスを推進した。それは単なるペーパーレスを目指すというレベルではない。
     たとえば、ホワイトカラーの社員一人が所持している紙を重ねたとしよう。どのくらいの高さになるか。そのときの調べでは平均8メートルくらいになるということだった。それをなんと20センチまで圧縮した。ちなみに20センチとは社員ひとりにあてがわれた収納スペース。引き出しひとつ分だった。
     まだ若かった私はそれに反発した。「ペーパーレスは手段であり目的ではないです」と自信満々で反論すると、倉重氏は毅然とした態度で「ペーパーレスは目的だ」といわれた。その迫力に呑まれた私は「はい、わかりました」と情けない返事を思わずしてしまった。
     倉重氏の話は続いた。「プリンター(印刷物)は情報の共有化を阻害するが、壁プリンター(プロジェクター)は情報の共有化を促進する」と。そうなればもう反論とかいうレベルではない。
     結局、まさに究極のペーパーレスが完了した。するとどうだろうか。結論からいえば5年間で生産性が5倍に伸びた。人員の伸びは2倍、売上げは10倍。コンサルティング会社は設備をもたない。つまりこの結果は「人材の能力がついた」ということである。言い換えれば「組織にシナジーが生まれた」ということだろう。
     くわしい話は割愛させていただくが、人が必要とする情報は、紙として引き出しにしまってあったり、記憶として頭の中に眠っていたりしている。誰かから求められた場合、紙をそのまま渡すと、誤解や勘違いを生んでしまったり、その一部に機密情報が入っていたりする。だから、相手に合わせてサニタイズしたり、リファインさせたりするわけだが、それが面倒この上ない。だから、誰かに聞かれてもそれは「もってないということにする」という風潮がどうしてもあった。
     ところがどうだろう。データが電子化され「簡単に情報を加工して渡せる」ようになった瞬間に、凄まじい勢いで情報交換が発生し始めた。情報交換が始まると、「情報をもらえない人間」と「情報が集まる人間」が出てきて、両者の業績の差がみるみる広がっていく。「情報が集まる任天は、自分でも情報を提供する人間」だと感覚的にわかってくるにつれ、ナレッジポイント(情報を出す人間)に人気が集まった。次第に組織のシナジーが生まれてきた、というよりも雰囲気、もっといえば文化までも変わってきた。
     個人的には、それ以来、やれ目的だのやれ手段だの、うるさいことはいわないことにした。特にDXについては、目的か手段かを議論し始めると進めないと思う。デジタル化を進めれば、そこにデータが生まれ、データが情報に変わり、その延長線上で今までと違う発想が生まれやすくなってくる。
     逆にいえば、やってみなければ、どのような成果がどのように出てくるのかを明確に把握できない。ここで躊躇するのかチャレンジするのか、そこで勝者と敗者が生まれてくるような気がする。すでに成功したGAFAの例で正当化しても説得力がないが、彼らのもっている不思議な魅力や文化はこんなところにある気がする。


    とてつもなく象徴的な事例。これも覚えておくためのメモ。

     DXが過熱しすぎて、「DXに注力しない企業は、経営戦略のない会社」くらいの風評が起きてしまいそうな状況である。DXで何をやるかではなく、DXに着手したといえる状況をつくり出したいというように見える。こうした「DX着手中」の札があちこちに出されている中で、この質問を繰り出してみたい。
     「あなたの会社のDXは、何をもっていったん完了としますか?」
     その出口が明確にあるという企業は少ないような気がしてならない。なんとなくのブームの中で、デジタル化の投資を増やし、でもその発想は従来のIT化なかなか抜け出せない。
     一方で「あるべき姿を考え、現状とのギャップを把握し、課題を整理する。そのうちIT化で解決できるところを抽出し….」という従来型のIT化の発想では、IT化は終わっても、そこにあるものには、DXなる言葉が生まれてきた意義が見えない気がする。
     DXの出口はどこにあるのか。たとえば、RPAで経理業務の効率化をしたら、それはDXなのか。それとも、GAFAのように新しいビジネスモデルをつくらないとDXとはいえないのか。
     先に述べたとおり、デジタルには破壊的な可能性があることは誰もが認めるところである。ただ、それはどんな会社にも通用するというものではなかったり、デジタルよりも重要なことがあったりする企業もあるだろう。その一方で、ここまで企業のプロセスや商材のデジタル化が図られると、デジタル化を推進していない企業はデジタル化コミュニティと接続できなくなる危険性がある。
     その企業においてDXが既存のIT化の名称変更ではなく、本当の意味で始められているとすれば、それはきちんと出口が考えられていることだと思う。逆にいえば、出口を聞いてそれが答えられるとすれば、DXが始まっていると個人的には考えている。
     その出口が、先に述べた「RPAで経理業務の効率化」といった、ショボいといわれるようなものでも全然かまわないと思う。
     ここのところメディアでは「デジタル人材1000名を中途採用」のような、IT系企業の大量中途採用の記事をよく見かける。いったん店を開いてしまった企業の「DX出口問題特需」を期待してのものだと思うのは、筆者の考えすぎなのだろうか。


    現職で、DXを軸にしたコンサルに従事している中、出口設定があいまいなままとりあえず進みかけてしまうプロジェクトはゼロではないため、かなり刺さった問いだった。

    優れた思考を促すための10のセントラルクエスチョン

  • この戦略の成功により、社員はどのような恩恵を受けますか?
  • 現在の組織にある課題がすべて解決したとしましょう。あなたの会社は何が実現できているのでしょうか?
  • もし、あなたの会社が、今、突如この世から消えたら、誰が悲しむでしょうか?
  • あなたの会社や事業が、このままの状態だとした場合、その「X-Day(終焉)」はいつ頃来ますか?
  • あなたの会社は新しい戦略を策定されましたが、それにより、どこが弱くなりますか?
  • あなたの会社の社員は、自分のお子さんたちを、自分の会社に入れたいと思っているでしょうか?
  • あなたの会社でのかつての「南極体験」はなんですか?
  • あなたの会社が「世紀の大番狂わせ」をするとしたら、それはどんなものでしょうか?
  • あなたの会社の社員が他の会社に移られた場合、その方々は大活躍する予感がありますか?
  • 今回の戦略の実現を、既存の組織分掌を考えずにとにかく最適な人間に任せるとした場合、誰にやらせたいですか?

  • この10の問いの意図などが気になる方はぜひ本書をお手に取ってみてくださいませ。

    サービスにおける体験設計・UXの参考事例

    最近、下記の本を読みまして。


    https://amzn.to/3IRFhdu

    サービスのUXを考える際のポイントがかなり網羅的にまとまっていたので、どんなエッセンスというか、ツボ?を押さえるべきなのか、その事例となる先輩サービスはどのようなものか、というのを備忘録的に残しておきます。

    ご参考になれば幸いです。

    ■言い訳の提供

    「だって、~だから」と、何かあったときに周囲や自分自身に伝えることができる「言い訳」を提供する

    BeReal

    1日1回ランダムなタイミングで通知が来て、その通知から2分以内に写真を撮影して投稿しなければならない
    ⇒ 盛る時間がないため、強制的に日常の自然な様子が投稿される
    = アプリ側が仕組みとして言い訳を提供する

    参考:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.bereal.ft&hl=ja&gl=US&pli=1

    社長のおごり自販機

    販売機の前で社員2名がそろい、2名の社員証をその自動販売機に向かって同時にタッチすることで、それぞれ1本ずつの飲み物を無料で受け取れる
    ⇒ ちょっとしたゲーム感覚・お得感で参加可能 
    = 気軽に話しかける口実(言い訳)を提供する

    参考:https://www.suntory.co.jp/softdrink/jihanki/ogori/

    ツイキャス

    ライバーがリアルタイムで自分の部屋などから日常の延長のようなトーンで、顔をアップで映す形式でアプリを用いてライブ配信を行うサービス(ライブ配信は30分で強制終了)
    ⇒ ライバーの負担を軽減する 
    = ファンに角が立たないライバーにとっての言い訳を提供する

    参考:https://twitcasting.tv/

    CHIMNEY TOWN GIFT

    絵本「えんとつ町のプペル」を子供にプレゼントすると、その寄贈先と絵本の冊数がNFTに刻まれ、寄贈する絵本の冊数に応じてメダルの色が変わるNFT
    ⇒ NFTウォレットにおける誰でも購入履歴が確認可能という特徴を利用 
    = 自身の社会貢献やセンスの良さをアピールせざるを得ない言い訳を提供する 

    参考:https://chimneytown.net/collections/chimneytowngift


    ■所属感のアシスト

    顧客に所属感を適切に感じてもらう。ただ、考えなしに一律にしようとすれば、顧客のプライドを傷つけたり、煩わしいと思われてしまうリスクを有する

    Neighbors

    同じエリアに住むご近所同士で、それぞれの自宅に設置された監視カメラの映像や、目撃情報など、治安や安全に関する情報をアプリで共有し合うサービス
    ⇒ 不安の共有・情報提供による貢献感 
    = 無理なく自然に所属感をアシストする(さらに貢献しようと思う好循環)

    参考:https://thebridge.jp/2018/05/amazon-owned-ring-embraces-neighborhood-watch-with-home-security-networking-app

    Fanicon

    アーティストやインフルエンサーが、月額会員制のファンコミュニティを運営するのをサポートするアプリサービス
    ⇒ ファン同士のやりとりの主軸化(インフルエンサー⇒ファンではなく、ファン同士のコミュニケーションがメイン)・新人ケアの複線化(参加者の中で新人が加わると、共通点が多い複数のファンとつなぐ) 
    = 新たなコミュニティに所属する不安感を自然に取り除き、熱量の同じものどおしの居場所が生まれる

    参考:https://fanicon.net/icon

    oVice

    バーチャルオフィスを作れるサービス
    ⇒ 一緒に仕事をしているという存在感が得られる 
    = 直接的なコミュニケーションがなくても、つながっているという体感を提供

    参考:https://www.ovice.com/ja

    (類似事例)

  • 特に会話することもない個人作業を、リアル・バーチャルの同じ場所・時間に行う「もくもく会」
  • 会話するわけでもないが、それぞれの自宅からスマホを使ってつながり、勉強する「オンライン自習室」
  • 自分は発言も顔出しもせず、音声だけを聞いている、もしくはBGM替わりに参加する「耳だけ参加」

  • ■ハードルを下げる

    意思決定のハードルを下げる。誰の、どこのハードルを下げる必要があり、なぜその人にとって必要なのか、多様なハードルがある中でどこから下げるべきかを検討することが不可欠

    nana

    自分で歌ったり演奏した音楽を、90秒単位で投稿したり、他のユーザーの投稿した音楽を聴いたりできるアプリ
    ⇒ 90秒というシンプル・一貫した上限を設置 
    = 歌い手側の歌唱力・準備時間、聴き手側のハードルを下げる

    (設計する際の検討ポイント)

  • 参加フォーマットを一律で、簡単だけど楽しめる絶妙なラインに設計できているか
  • コラボやエフェクトなど、初心者でも素を晒さずに面子が立つ仕組みを用意できるか
  • 初心者、ベテラン、投稿者、リスナーと、様々な立場の人にとって、何がハードルを下げることになるかを配慮しているか
  • 参考:https://nana-music.com/

    スプラトゥーン

    カラフルなインクを敵に発射したり地面に塗ったりして、制限時間内でチームの色の面積の広さを競う対戦ゲーム
    ⇒ 初心者でもすぐにしっかり戦力になり、簡単かつ明確にチームに貢献できる(敵を倒さずに楽しめるナワバリバトル) 
    = 難しさや足を引っ張って迷惑をかけたくないという参加ハードルを下げる

    参考:https://www.nintendo.co.jp/wiiu/agmj/index.html


    ■罪悪感の転嫁

    例えば下記のような罪悪感を解消すること

  • ペットの犬を亡くした後に、新しいペットを迎えた罪悪感が消えない
  • パワハラと言われるのが怖くて、部下を叱れず、部下が後々苦労すると内心わかっている
  • 服をたくさん持っているのに、新品の服を買うことに罪悪感を感じる
  • ラクサス

    月額性で高級ブランドバッグをレンタルできるサービス
    ⇒ バッグと処分するという行為がなくなる 
    = 捨てる罪悪感、売るのは惨めというジレンマを解消する

    参考:https://laxus.co/

    スナックミー

    100種類以上のおやつから、自分に合ったおやつを定期配送してくれるサブスクサービス
    ⇒ 食べきれずに捨てる体験をなくすため、余ったおやつを他の子どもに寄付できる「返送用の封筒」を用意 
    = 捨てる罪悪感を払拭する(捨てることを考えていない段階から、別ルートを用意)

    退会者からのインタビューから着想を得たとのこと。CSの鑑だな。

    参考:https://snaq.me/


    ■見えない化

    あえて見えなくすることで、新たな価値を提供する

    スマートバスマット

    体重測定できるバスマット
    ⇒ 体重はバスマットに表示されるわけではなく、スマートフォンアプリにデータとして蓄積される 
    = 自分の体重と直視しなくて済む、自分だけがこっそり確認したいというニーズに応える

    参考:https://issin.cc/pages/smart-bath-mat

    LINEギフト

    LINEでつながっている友だちに対して、ギフトを選び、贈ることができるサービス
    ⇒ ギフト送付先の住所情報を見なくて済む 
    = お互いアカウント名しか知らないけど、プレゼントを贈りたいというニーズに応える

    参考:https://linegift.line.me/


    ■心のサンクコスト

    お金以外の要因で、「せっかく~したんだから」と継続する力を引き出すこと

    RIZAP

    言わずもがなのパーソナルトレーニングジム。
    ⇒ 最初に全額をまとめて払う×2か月で決着をつけさせる 
    = もう腹を括るしかないという心持ちにさせる

    参考:https://www.rizap.jp/

    MEZON

    月額定額で1,200以上の様々な美容院に通い放題のサブスクサービス。
    ⇒ 行かなくてもいいときに行くのは無駄遣いみたいでためらう、他の美容院を試しにくいという気持ちを軽くする

    参考:https://mezon.jocy.jp/

    デアゴスティーニ

    特定のテーマに関して、週刊など定期的に少しずつ紹介していく、付録付き雑誌
    ⇒ 少しずつ形にしていく楽しさや、コレクション欲をくすぐる 
    = 安価な最初の号で、パーツの一部を手に入れることで、心のサンクコストを発動させる

    (下記のように購入者目線で設計されていることが大前提)

  • 最初の一歩のパーツの魅力と価格や難易度などのハードル設計
  • 各回のパーツのちょうどいいサイズ感の設計(大きすぎず、細かく分けすぎない、単体での面白さをしっかり確保)
  • 全体のテーマ設定と、各回の今後の予定を最初にどこまで、どのように見せるかの設計
  • 参考:https://deagostini.jp/


    ■自分で決めない

    自分で決めないことで、決めるという行為の負担・難しさ・副作用を背負わなくて済む

    (決めることのデメリット)

  • 決めるための調査・思考に負担・ストレスがかかる
  • 時として、決める上で必要な知識・完成が求められる
  • 決めたからには・・・と結果に責任が伴う
  • 「決めるなんて当たり前」と、サポートされる機会が乏しい
  • dōzo

    贈る相手に合わせたテーマだけを選び、そのテーマから好きなものをギフトを受け取る相手が選べるサービス
    ⇒ 具体的な商品は受け取る側が選ぶが、贈る側も相手に伝えたいメッセージを兼ねたテーマを選択可能 
    = 贈り手:相手に負担をかけるのは嫌、センスがないと思われるのは嫌という気持ちからの脱却 受け取り手:欲しくないけど、断れないし捨てられないというもやもやから脱却

    参考:https://dozo-gift.com/

    airCloset

    ファッションのサブスクサービス、プロのスタイリストがユーザー一人ひとりに合った服をセレクトして自宅に郵送してくれる。
    ⇒ 自分で選ぶ自信がないものを、プロが専門性・客観性に基づいて選んでくれる 
    = 第三者に似合う服を認めてもらう承認感が得られる

    参考:https://www.air-closet.com/

    お見合い

    名前の通り。結婚するために、近所の顔が広い人など第三者が仲人となり、結婚相手を探して、紹介する文化。
    ⇒ 結婚前提で会える、人柄や身元に関して安心できるという安心感を享受できる 
    = 自分で選ばずに済み、「会いましょう!」ではなく「会うことになりましたねー」という入り方ができ、疲れにくく、心地よい

    (下記は参考になるポイント)

  • 最終的には自分で決められるが、一歩踏み出す相手は自分で決めないという、自分で決めるところ・決めないところのバランス設計
  • 「会いましょう!」ではなく「会うことになりましたねー」という入り方ができる体験が持つ価値
  • 自分たち同士で決めないことによる、視野の広がり
  • Yohana

    ピンポイントでの家事外注ではなく、タスクの優先順位を設計し、進めてくれるトータル外注サービス
    ⇒ 1日複数回、毎日のように襲ってくる決定コストを根本的に下げてくれる 
    = 家事を「自分で決めない」という思い込みを解消してくれる

    参考:https://www.yohana.jp/


    ■失敗OK

    言葉の通り。失敗してもOKであるという体験設計を盛り込むこと

    (盛り込む際に確認すべきポイント)

  • 対象の商品やサービスを体験するとき、失敗と感じる可能性があるとしたらどんなものか
  • なぜそれを失敗と感じて、行動を止めてしまうのか
  • 誰が、どのようなタイミングでその失敗を感じるのか
  • 失敗OKにすることで、別の部分で体験の質が下がらないか
  • ある人にとっての失敗OKか、別の人のストレスになっていないか
  • 最適な失敗OKの設計は、ユーザーや顧客の成長や、商品やサービスの成熟に従って変わっていくか、その変化を取り入れているか
  • あと値決め

    商品やサービスの価格を、顧客が、購入して利用した後に決めるサービス
    ⇒ 質がわからない初めての商品やサービスであっても一歩踏み出しやすい、+ サービス提供側に一定の緊張感が生まれるため、顧客側からしても安心感 + 値段を通してサービス提供者に感謝を伝えられる

    参考:https://pricing.netprotections.com/

    Snapchat

    投稿内容がしばらくすると自動的に消えるSNS
    ⇒ 自動で消えるため、デジタルタトゥーのように残らない安心感がある 
    = 気軽に発信・表現できる幅が広がる

    参考:https://www.snapchat.com/ja-JP

    レゴブロック

    カラフルで、様々なk達と大きさのブロックがたくさん入っている玩具
    ⇒使い方に正解やゴールがなく、自由な遊び方が可能 = 失敗の概念をなくすことで、恐れず着手できたり、自由な表現やチームワークを発揮しやすくなる

    参考:https://www.lego.com/ja-jp

    はがせるマーカー

    蛍光ペンのように教科書や本にカラフルな線を引き、後で消すこともできる商品
    ⇒ 蛍光ペンを引いた後に公開することを防ぐ + 図書館で借りた本など、汚せないけどマークしたいという普段我慢している欲求を満たす

    つまるところ、失敗OKというのは、他者の目線や未来の不確実性を気にせず、思ったことや気づいたことを表現しきること、挑戦しきることを可能にすること

    参考:https://www.kanmido.co.jp/products/hagaserumarker/


    ■難問

    「誰もできないと思うからこそ、我こそは!」という、一部の人を引き付ける魔力をうまく盛り込む

    Googleの採用広告

    優秀な人材を採用するために、複雑な数字を掲載した一昔前の広告
    ⇒ 難問というだけで、それがギリギリ解ける人をそそる魔力をもたらす 
    = 特定領域のマニアや、興味を持つ人、ある感性を大事にする人などいがいと裾野が広いアプローチとなる

    参考:https://note.com/miyaccchi/n/nf01f2faebe0a

    ギネス世界記録

    多様な分野の「世界で一番」を集めた書籍・認定サービス。
    ⇒ ”世界一”という圧倒的な難問性・インパクトと、切り口私大で意外と身近で到達可能である設計

    参考:https://www.guinnessworldrecords.jp/


    ■トライアル2.0

    お試しにおける通例の概念を壊す

    例えば下記の思い込みなど

  • 対象商品の思い込み(XXはトライアルできて当然だけど、VVはトライアルできるわけがない)
  • 方法の思い込み(服の試着はお店の中で店員さんが見ている中で、短時間で済ますべきだ)
  • 範囲の思い込み(お試しするのは、椅子とかその対象商品のみで、椅子を使って食事を取ったり、テレビを見るといった体験全体は対象ではない)
  • Oh my glass

    ネットで注文し、自宅で試着できる眼鏡屋さん
    ⇒ 試着したい眼鏡を5つまで選択し、数日の間、自宅で自由に試せる 
    = 店舗では難しい友人・家族からの評価が聞ける+普段のコーディネートと合わせられる+店員さんの目を気にせず試せる

    参考:https://www.ohmyglasses.jp/

    丸善ジュンク堂書店

    圧倒的な品揃えが特徴の大手書店チェーン
    ⇒ 本屋に一晩泊まって語り合ったり、好きなだけ本を読んだ後、本に囲まれながら眠りにつけるツアー、目次だけを30分眺める読書会など様々なトライアル体験を開催 
    = トライアル対象を1冊の書籍など個別の商品ではなく、カテゴリー全体に広げ、新たな読書体験を提供し差別化

    参考:https://www.maruzenjunkudo.co.jp/

    Rentio

    様々な家電など、通常はレンタル対象でなかったものを、購入せずに月額でレンタルできるサービス
    ⇒ 今までではレンタルするという発想すらなかったもののトライアルの壁を崩す 
    = 高価ゆえにマニア以外の層の購入につながる

    参考:https://www.rentio.jp/


    ■使う分だけ

    ユーザーの「使う分だけ」を特定し、体験を通して適切に提供する

    (盛り込むことによるメリットは下記(一部))

  • 自分で使う分だけ取り出す手間が省ける
  • 自分が正しく、使う分だけを判断できているかの不安が解消される
  • 使わない分を捨てて、無駄にせず住む
  • PillPack

    Amazonが買収したオンライン調剤薬局サービス
    ⇒ これさえ飲めばいいという分をひとまとめにして、小分けで配送 
    = 説明文の確認・薬の組み合わせの確認コストを省き、飲み忘れを防ぐ

    参考:https://www.pillpack.com/

    Kit Oisix

    料理メニューに必要な材料だけを、必要な量だけ、セットで用意して届けてくれるミールキットサービス
    ⇒ 料理に必要な分を量ったり、余りが出るといった負担や悩みを解決する 
    = 料理好きにとっては・・・料理にチャレンジすることのハードルを下げる、料理が苦手な層にとっては・・・料理のイメージを湧きやすくする

    参考:https://www.oisix.com/shop.kounyuu–oic_intro_shinki_kit__html.htm


    ■理由の説明

    ユーザーや顧客納得感を持ってもらうための説明・コミュニケーション

    (下記を考慮する必要あり)

  • そもそも何に対する納得感を上げることが最も大事か
  • そのために、どの理由を説明すればよいか
  • 理由を長々と文章で説明しても見てはもらえない中、どのように、どのタイミングで理由を表現するか
  • 理由を誰に説明させるか
  • いかに理由を理解したいという気持ちになってもらうか
  • Facebook広告の表示説明

    Facebook内で表示される広告に記載される「なぜあなたにこの広告を見せているか」という説明
    ⇒ どんな理由で、何に基づいて表示されているかの透明性が上がる 
    = 自分の行動の影響範囲や、ある程度自分でコントロール可能なことがわかり、一定の納得感を醸成

    参考:https://www.facebook.com/help/562973647153813

    訳アリ商品

    何らかの理由で、通常の価格やルートで販売できない商品
    ⇒ 劣っているからではなく、思いを添えて意味を持たせる(食品ロスに貢献するなど) 
    = 納得感を持った購入を促す

    セサミクレジット

    決済サービス「アリババ」の中にある、利用者の信用スコアリング機能
    ⇒ 財産・収入のみならず、行動面を含めて信用度合いを判断 
    = データの扱いへの懸念以上の利用メリットに納得させる

    学び

  • 商品やサービスの説明だけでなく、ユーザーへの対処の違いの理由の説明も価値を持つ
  • 把握できる情報が適切に増やせれば、納得感や行動変化につながる理由の説明ができる
  • コントロール可能な理由を説明すれば、自助努力を促し、良い評価を得ようと行動変化を促せる
  • 参考:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%9D%E9%BA%BB%E4%BF%A1%E7%94%A8


    ■プロセス参加

    完成した商品・サービスを提供するのではなく、完成に至るプロセスに巻き込む

    リビングラボ

    新商品の研究を行う際、その研究成果を顧客や住民を巻き込んで一緒に考え、一緒に進めようとする取り組み(IKEAのSPACE10が有名)
    ⇒ サービスの受け手の顧客や地域住民が参加できる 
    = 見えるところで検討され、時には意思決定にも関われるため、納得感がさらに高まる

    参考:https://wired.jp/2019/09/29/vol34-ikea-space10/


    ■使い道の明示

    支払うお金がどこでどう使われるのか、その商品やサービスの購入がどのような影響を与えるかを明示する

    ベルマーク

    すべての子どもに等しく豊かな教育を受けさせたいという理念で1960年に始まった活動
    ⇒ 自分たちの学校が備品や教材を手に入れることができる and 世界の学ぶ環境が乏しい学校に一部が寄付される 
    = 自分のためにと誰かのための両方にメリットがあり、自然と納得感や継続を促す(e.g. TABLE FOR TWO)

    参考:https://www.bellmark.or.jp/

    Lemonade

    2015年に設立された、ニューヨークに拠点を置く損害保険会社
    ⇒ 加入者が保険料として支払うお金を、保険会社のものとしてではなく、加入者のものとして扱える(支払い有無にかかわらずフェア)他、自分が興味のある分野のチャリティ団体への寄付にも活用できる 
    = 使い道に変な利害関係が生まれない、決めるのはあくまでも自分という納得感

    参考:https://www.lemonade.com/

    EVERLANE

    2011年にサンフランシスコで生まれたファッションブランド
    ⇒ 徹底した透明性にこだわり、販売する商品ごとに、材料費・人件費・出荷コストなど、具体的な金額を明示 
    = 企業の透明性・人格・作り手の顔が見え、納得感につながる、また取り組み自体に参加することでアイデンティティの形成につながる

    参考:https://www.everlane.com/


    ■診断

    その名の通りの診断。ユーザーにスポットライトを当てることで、納得感を醸成する

    スピークバディ

    GOOD DESIGN AWARD 2021を受賞したスピーキング特化型のAI英会話アプリ
    ⇒ 診断を通してユーザーに最適なカリキュラムを生成 
    = ユーザーを理解するだけではなく、AIを活用したサービス自体のイメージやレベルの高さまで伝えられ、ロイヤリティを高めている

    (診断の中では、下記ポイントをしっかりと抑えている)

  • 主人公であるユーザーを理解しようとAIが積極的にコミュニケーションを取る
  • 理解したうえで結果を伝え、文法力・語彙力・発音などを採点、理解されていることを実感させる
  • その理解に基づき、カスタマイズした体験を提供する
  • 参考:https://www.speakbuddy.com/

    大塚家具

    家電量販店チェーンのヤマダHDが運営する家具販売店ブランド
    ⇒ 顧客の自宅や引っ越し先、新築の内覧会に同席し、家具がコーディネートとして合うか、部屋に問題なく配置できるかを診断する 
    = 実際に利用する現場・状況での利用目的にフィットした診断を提供

    参考:https://www.idc-otsuka.jp/

    MEDULLA

    診断を通して数万通りの組み合わせからユーザーに合ったシャンプー、ヘアオイルなどのヘアケアを提案するサービス
    ⇒ 診断後の定期カウンセリング、処方のアップデートを通して、よりフィットした体験を提供 
    = 使えば使うほどに自分に合うサービスになるため、離脱も防ぎ満足度も担保

    参考:https://medulla.co.jp/


    ■応援のリッチ化

    応援したくてもできない、応援の力を発揮しきれないという制医薬を取り払い、応援体験を進化させる

    少年ジャンプ+

    週刊少年ジャンプが運営するアプリ
    ⇒ まだ知名度のない新人漫画家の作品を掲載、広告を用いて漫画家を応援する取り組みを実施 
    = 自分のための広告閲覧から、応援したい相手のための広告閲覧となることで、参加しやすい応援体験を提供

    参考:https://shonenjumpplus.com/

    フリータンク

    格安SIMのmineoが提供する特定の個人ではなく、ユーザー全体とパケットを共有する仕組み
    ⇒ 自分に余裕があるときは、困っている人を応援できる(おすそ分けの気持ちをコメントし合える)
    = 応援するにしろ、されるにしろ、助け合いが行われるコミュニティへの参加意識が高まる

    参考:https://mineo.jp/

    BTSファン

    韓国の7人組男性アイドルグループを応援する世界中のファン
    ⇒「ファンサブ」と呼ばれるファンのための韓国語以外の字幕作成、ファンが自主的にお金を集めて広告を出す取り組みがある 
    = 貢献が他ファンや公式動画の冒頭クレジットに載ることで見える化され参加意識が高まる and 言語がわからないマイノリティにも価値発揮ができる場となる

    (その他、ファンの盛り上がりの要因)

  • 商品のビジュアルやコンテンツなどに対して、応援したい人の自由な利用に柔軟(運営側の著作権に対する考えが柔軟)
  • 応援の切り口を多様に用意し、その参加や貢献をその人ならではのもの、オリジナリティが入ったものにできるように工夫する

  • ■無名からの育成

    無名のころから応援することで「私がいなくちゃ」という貢献感や使命感を感じる

    テニミュ(ミュージカル『テニスの王子様』)

    『テニスの王子様』を原作としたミュージカル
    ⇒ テニミュ自体の未完成さが魅力となる 
    = 無名のころから私が見守り、私が育てたという気持ちを楽しめる

    「(テニミュが多くの人に愛されているという現象において)何が重要だったかと言いますと、キャストの人たちの中には、当時は無名な人も含まれていたのですが、ファンたちが、そうした無名のキャストが育っていくところも含めてミュージカルを楽しみはじめたことです。結果的にテニミュ出身の人は、いまやかなりの数に上っていますが、ファンにとっては、自分たちで育て上げたんだという感覚もあるのだと思います」 出典:『ファンダムエコノミー入門』コクヨ野外学習センター

    (無名な人を応援することの価値)

  • まだ無名だから、コミュニケーションの機会が比較的ある
  • ファンもまだ少ないから、応援を喜んでもらえそう、「私が支えないと」と感じやすい
  • のちのち有名になったとき、自分の見る目や見守った貢献を誇りに思える、その日を楽しみにできる
  • 参考:https://www.tennimu.com/

    宝塚友の会(宝塚歌劇団のファンクラブ)

    宝塚歌劇団のファンが自主的に設立したファンクラブ
    ⇒ 自分が推す生徒の抜擢やプロモーションを、劇団発行の読み物やポスター等の情報をもとに、ファン同士で情報を集め、交換し、推理・予測する 
    = 劇団の公演や発信される冗談から目が離せなくなる(自由度が低い分、そのルールに従うからこそ良い体験が得られる)

    参考:https://kageki.hankyu.co.jp/friends/index.html


    ■差からの連帯

    何かに参加する際に求められる同質性ではなく、差があるからこそ参加できるという体験

    ビアボール

    炭酸割りで好きなアルコール度数で飲むことを想定した度数16%の高濃度ビール
    ⇒ お酒が弱い人でも、ビアボールを少しだけに炭酸水をメインにして飲める 
    = お互いのスタイルを大事にしながら、体験を共有できる

    参考:https://www.suntory.co.jp/beer/beerball/

    Everytable

    カリフォルニアに複数の店舗を持つ栄養バランスのとれた持ち帰り用のお弁当屋さん
    ⇒「栄養バランスのとれた食事を食べて健康に生きる権利は誰にもでもある」という理念のもと、同じ栄養と品質のお弁当を、富裕層の多いエリアでは高価格で、貧民層の多いエリアでは低価格で販売 
    = 助ける人・助けられる人を別の体験で分断させず、対等な参加意識を生む

    参考:https://www.everytable.com/

    ダイアログ・イン・ザ・ダーク

    真っ暗な空間に入り、何も見えない不安の中で、ガイドの方の案内に身をゆだねながら時間を過ごすエンターテイメント
    ⇒ 視覚障害のある方と同じ感じ方を経験できる、または障害のない方同士でも更なる協力関係が生まれる 
    = 共通の土台として、対話や交流の機会を生み出す

    参考:https://did.dialogue.or.jp/


    ■脱顧客

    「顧客だから」と絶対していた暗黙の前提の意味を見直してみる

    ネスカフェ アンバサダー

    オフィスやコミュニティにネスレのコーヒーメーカーを設置し、出来立てのコーヒーを楽しんでもらうサービスの導入を主導する代表者
    ⇒ アンバサダーとして社内での誇らしい想いや、アンバサダー同士でイベント等に参加できるコミュニティの形成など、導入自体を楽しめる 
    = 顧客企業を企業としてみるだけでなく、個々人の人間としてとらえ、大切にしながらも、過度なお客様扱いはせず巻き込む

    参考:https://shop.nestle.jp/front/contents/ambassador/amb/

    京都のお茶屋

    祇園、宮川町などの花街にあるお茶屋さんのお座敷で舞妓さんや芸子さんの舞や会話を楽しむ文化
    ⇒ 様々あるルールの中でも有名なのは「一見さんお断り」がある ⇒ 長年のお客様がどこのどんな人が来るかわからないという不安を感じず、安心できる場所を提供する + 紹介する・されるというお客様同士の関係性の意味を守る 
    = 短期的に機会損失が生まれても、お客様に独自の参加意識や体験を提供する

    スクラム採用

    人事以外も含めた全社員が一丸となって当事者として採用を主導していくという採用に対する考え方
    ⇒ 人事以外のお客様扱いを変えることで、新たな体験や価値を生む(例:一緒に働く人が口説くことで内定承諾率が高まる)+口説く過程で自社の魅力に気づき、自社のことが好きになる 
    = 人事以外の全社員をお客様扱いせず、同じ目線で一緒に戦う仲間にすることで、自社に対する満足感が高まり、離職率の低下にもつながる

    参考:https://lp.herp.cloud/about-scrum-recruiting


    ■貢献の余白

    未完成である部分、欠けている部分を余白として残す

    (よい余白5か条)

  • サービスのコアの部分は、しっかり完成度を上げて、責任をもって運営することにコミット
  • 余白が自分たちで何か協力できそう、協力したい、やりがいがある、と思える絶妙な難易度に設定されている
  • 余白を埋めたことが、自分だけでなく他の人の役にも立ち、感謝される
  • どうやったら貢献できるのかのヒントや発想の刺激が用意されている
  • 貢献して参加したいと思えるような魅力的なコミュニティがある
  • ADDress

    日本各地の様々な空き家にどこでも住むことができる、住まいの定額使い放題サービス
    ⇒ サービスを司る「家守」(コミュニティマネージャー)から最低限のルールを伝えられる以外は、自由にサービスを利用できる 
    = ルールがガチガチでないからこそ、家守やユーザーから様々な提案がなされ、実施される面白みがある

    参考:https://address.love/

    NewsPicks

    交流機能を兼ね備えた経済ニュースサービス
    ⇒ コンテンツの一部であるコメントをユーザーが自発的につけられ、編集者のような仕事の余白を、一般ユーザーに開放 
    = 自分のコメント・シェアが他のユーザーに役立ち、コメントやいいねが貰えることで、貢献の実感が湧く

    参考:https://newspicks.com/

    OriHime

    身体に障害をお持ちの方や、行動が制限される方々が、仕事やコミュニケーションを通して社会に参加するのをサポートするための遠隔操作型ロボット
    ⇒ 上記の方々が活躍する場を提供
    = 自分たちが貢献する余地のないと思われた社会に対して貢献できる余白を生み出す

    参考:https://orihime.orylab.com/


    ■ナラティブ

    聞き手がストーリーを受け取ったのち、自分を語り手として再度語り直す物語の要素をエッセンスにする

    Ninja DAO

    忍者をモチーフにした数多くのキャラクターのNFTコレクションである「CryptoNinja」を起点に様々な活動を行っているNFTコミュニティ
    ⇒ 魅力的で人気のあるCryptoNinjaのキャラクターを、自由に二次創作やファンアートの対象にでき、商業理由も自由
    = 派生コンテンツを通して多くのクリエイターが楽しめる & NFTを二次創作のクリエイターも所持することで、ブランド価値も保たれる

    参考:https://www.ninja-dao.com/


    ■マイルド参加

    気軽で緩い参加体験を提供する(そして、しっかりとコミットしている人のやる気を失わない設計になっている)

    (担保すべきポイント)

  • 頑張っている参加者がやる気を失わない工夫をする
  • マイルドとはいえ魅力的な部分を担える参加形態にする
  • マイルドさが、参加の負担における本質的なネックの軽減につながっている
  • ライブゲーム

    ゲーム実況の配信者と視聴者が一緒になって遊べるゲームジャンル(ただ見ているだけではなく、ゲームしている配信者をアイテム購入などでアシストする)
    ⇒ しっかり参加はしないけど、参加する楽しさを味わえる
    = しっかり参加も、受け身の視聴もためらっていた層に、新たな体験を提供する(ゲームに限らず、参加の負担でネックになる体験に通用可能)

    参考:https://www.mirrativ.co.jp/product/game

    イマーシブシアター

    “観客は客席、演者は舞台”という前提を崩し、顧客が物語に参加する演劇のジャンル
    ⇒ 舞台のものを触ったり、食べたりでき、その動きに役者たちも反応する
    = 観客に没入体験を提供する

    参考:https://www.tomareruengeki.com/immer

    と、上に挙げた事例ですが、本書にはもっと丁寧に詳細に書かれているかつ、「エッセンスは分かったけれど、じゃあUXってどうやって考えるべきなの?」という点も端的にまとまっています。

    ご興味のある方は是非に。

    頭のいい人が話す前に考えていること

    基本的なこともあれど、日頃から意識できないことや改めてそうだよなーと思わせてくれる戒めが多くあり、かなり良書でした。

    下記、忘れないようにメモっておきたい一節たち。

    「怒っているとき」は、頭が悪くなる
    怒りや恐怖など強い感情にとらわれると、愚かな行動に走りやすい。

    そんな時、冷静になって思考力を回復する、つまり頭をよくする時間は6秒。反応せずにまずは6秒間待つべき。

    「頭の良さは他者の認識が決める」
    コミュニケーションの主体は自分ではなく、相手にあるため、どれだけ優れたアイデアでも他社に伝わらなければ、そのアイデアは存在しなかったことになる。

    仏教の禅僧、イスラム教のスーフィ教徒、タルムードのラビなどの神秘家の公案に、「無人の山中で木が倒れたとき、音はするか」との問いがある。今日われわれは、答えが「否」であることを知っている。音波は発生する。だが音を感じるものがいなければ、音はしない。音は知覚されることによって音となる。ここにいう音こそ、コミュニケーションである。この答えは目新しくない。神秘家たちも知っていた。「誰も聞かなければ、音はない」と答えていた。
    この昔からの答えが、今日重要な意味を持つ。
    コミュニケーションが成立させるものは、受け手である。コミュニケーションの内容が発する者、すなわちコミュニケーターではない。彼は発するだけである。聞く者がいなければ、コミュニケーションは成立しない。意味のない音波しかない。
    『マネジメント[エッセンシャル版]基本と原則』より

    頭のいい人は論破しない、人ではなく課題と闘う
    頭のいい人は、議論の勝ち負けではなく、議論の奥にある、本質的な課題を見極めようとする。

    人はちゃんと考えてくれる人を信頼する。ちゃんと考えて話すというのは、”相手の言っていることから、その奥に潜む想いを想像して話す”ということ。

    頭のいい人は”賢いふり”ではなく”知らないふり”をする
    知識は披露するのではなく、だれかのために使って初めて知性となる。そのため、簡単にアドバイスしない、意見を言わない、とにかく相手に話してもらうことが重要。

    話し出す前に”本当に相手のためになるのか?”と立ち止まることで、知識を披露したいだけ、ただ言いたいだけの自分に気づくことができる。

    承認欲求をコントロールできる者がコミュニケーションの強者になれる
    自分の承認欲求は抑制し、他者の承認欲求を満たすことができれば、「コミュニケーションの強者」となることが可能。

    最も影響力のあった政治家の一人、田中角栄は秘書から支持者にカネを配るとき、下記のように言ったが、その真意は「候補者の自尊心を傷つけずにカネを渡す」ことが大事。

    「いいか、きみが候補者にカネをくれてやるなんて気持ちが露かけらでもあれば必ず顔色に出る。そうすれば相手は百倍、千倍にも感じる。百万、二百万を届けたところで一銭の値打ちもなくなるんだ」
    田中が金権政治の権化のようにいわれながらも、憎めないキャラクターと見なされるゆえんであろう。
    服部龍二著『田中角栄 昭和の光と闇』より

    成り立ちを知ることで客観視につながる
    成り立ちを知ることは、深く考えるための足掛かりになり、人と違うアイデアや深い議論を生み出す。

    e.g. 終身雇用:もともと「国・企業が労働者の生活を保障する」という、長期雇用の慣行が国全体に広まり、それに戦後に引き継がれた。そして高度成長の原動力の一つになっている。

    米国政府が公開する構造化面接における質問5パターン
    導入質問①:”過去に行った行動”についての質問「直面した状況にどのように対応したか?」
     └意図:将来の行動を最もよく予測するのは、同じような状況下での過去の行動

    導入質問②:”仮定の状況判断”に基づく質問「仮に~このような状況に置かれたとしたら、どのようにしますか?」
     └意図:人の意図は実際の行動と密接に結びついている

    深堀質問①:状況(シチュエーション)に関する質問「そのとき、どのような状況でしたか?」

    深堀質問②:行動(アクション)に関する質問「そのとき、何をしましたか?」

    深堀質問③:成果に関する質問「行動の結果、どのような変化がありましたか?」「何か現場で反発はありましたか?」